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発酵デザイナーが思い描く、未来の「微生物的人間」とは?

発酵とITと文化人類学

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Apr 20, 2017 by H.SCHOOL Reporter

3 Lines Summary

  • ・日本人の発酵の原点「お酒」「カビ」「神様」
  • ・お酒は異界への扉。醸造家が持つシャーマン的感覚
  • ・次のシンギュラリティで「微生物的人間」に進化?

「発酵×IT」

「テクノロジー×日本の精神性」をテーマに3名の識者と未来のあり方を探るトーク番組「H.SCHOOL (2017.04.15 OA) 」。発酵デザイナーの小倉ヒラク氏が日本人と発酵について解説する。

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小倉ヒラク
僕は、微生物学の研究とデザイナーの二足のわらじを履いて、それを合体させたような仕事もしてます。具体的には、菌の培養の仕方や発酵食品の作り方を一般の方向けにひも解くワークショップとか、自治体などと協力して、例えば「発酵を使った街づくり」を打ち出したりとか、発酵技術を使った商品開発とか、詳しくはgoogleで検索してください(笑)。

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日本史上初めて出てくるお酒


小倉

日本の歴史の中で初めて「発酵」が出てくるのは古事記です。古事記に、ヤマタノオロチをお酒に酔わせて殺したという話が出てきて、これが発酵食品が出てきた初めてのお話です。

これに前後して編纂された播磨国風土記に、具体的なお酒の話が出てきます。それは発酵醸造界ではすごく有名な「みかれいぬれてかびはえき」という言葉からはじまる一節で、どんな内容かというと、「神様にお供えしたオコワが露でカビたらお酒になっちゃって美味しかったから皆でパーティーしたよ」っていうポエムなんです。

つまり日本人にとって発酵の原点というのは3つです。一つが「お酒」。もう一つがお酒を作った「カビ」。最後が「神様」で、この3つが分かちがたく結びついてる。今でも伊勢神宮の中には、お酒を作る場所が残っていて、「さけのつかさ」という人が、甘酒を発酵させた「どぶろく」みたいなお酒を作って神様にお供えしています。

お酒は神の世界を開く扉だった


小倉

「お酒」っていうのはもともとなんだったのか。もちろん酔っ払って楽しいっていうのもあるんですが、神様の世界へのチャンネルを開くものだったんです。お酒を飲むっていう事は、ある種シャーマンの世界に入っていくということなんですね。昔の日本の和歌とかにも、お酒やカビの記述がいっぱい出てくるんですけど、それが出た時っていうのは必ず異界への扉が開く時だったんだと僕は思っています。

醸造家が持つ「超感覚」


小倉
僕は醸造家の人たちといつも一緒にいるんですけど、彼らの言葉って常人を逸しているところがあるんですね。例えば、一緒に飲んでて夜11時くらいになると「あ、麹菌が呼んでる」って帰っちゃうんですよ。それで麹の手入れが終わったらまた戻ってきて、もう一杯やろうかとか言うんです。

醤油を作ってる職人は、例えば梅雨になると湿気が高くなって菌の働きが変わるんですが、それが感覚で分かるって言うんですよね。微生物はもちろん目に見えないんですが、その目に見えないものと朝から晩までずっと一緒にいると、普通の人間にはちょっと分からない感覚っていうものが育ってくるんでしょう。だから醸造家はシャーマン的な感覚を持っているんじゃないかなと思っています。

お酒を「リバースエンジニアリング」する


小倉

実は僕もちょっとだけ特別な感覚が分かるんです。お酒を飲んだ時に、そのお酒がどの菌を使っているかとか、どれくらい糖分が残っているかとか、どれくらい酸味があるかっていうのが7割くらい当てられます。発酵を学び始めたころは、1000円のお酒も1万円のお酒も全部同じにしか思えなかったんですが、ずっとやっていると微妙な感じが分かってくるので、仕込みをしたり発酵食品を嗜むっていうことは自分の感覚をものすごくブーストしていく作業だと思ってます。

さらに、なぜ醸造家がこのお酒をこういう味にしたのかも分かるようになってきます。つまり「リバースエンジニアリング(既存の製品を解体・分解して、製品の仕組みや構成部品、技術要素などを分析する手法のこと)」をすることで、「彼」がどんなデザインをしようとしたのか読み解けるようになってくるんです。

例えば「彼」と一緒にブドウ畑を歩いていたり、あるいは森の清水が湧き出るところが見えたり、あるいは菌がぶくぶくと発酵していくとこが見えたりっていうふうに、味覚を越えた別の感覚が発動してくるんです。すると、気持ちもいろんな場所に飛んでいく感じがして、例えば地球の裏側のニュージーランドや日本のはじっこの森の中にいる感覚になるんです。

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ドミニク・チェン

それ、すごくよくわかります! 僕はヒラクさんほどじゃないんですけど発酵食大好き人間で、自分の家でぬか床を作ったりしてるんですけど、色んな国で集めた塩を使うんです。モンゴルの塩とか、死海の塩とか地中海の塩とか。それで想像するんです。「~このモンゴルの塩は、数千キロ離れた土地のもので、それが今東京の自分の家のぬか床にあるんだ~」って。すると、このロマンたるや、なんなんだ! みたいな気持ちになります。

僕は全然低レベルなんですけど、発酵食品でリバースエンジニアリングまでできちゃうし、僕もそこに至れる可能性があるんですね。

次のシンギュラリティは微生物的人間


小倉

僕は最近シンギュラリティ(人工知能の能力が人類の能力をはるかに超越する時点)のことを考えていて、その時が来れば絶対に「微生物的人間」が登場すると思っているんですよ。

ドミニク
「微生物的人間」!
新しいコンセプトが出ましたね。

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小倉

「微生物的人間」とは、もちろん個体意識も持ってるんですけど、エコシステムの一つの結節点として作用している。文化人類学者の「グレゴリー・ベイトソン」という人が提唱しているような世界観なんですけど、自分を持ちつつも、自分を拡張して、色んな生き物とネットワークで繋がるような世界観を持つ人間になっていくんじゃないかなって僕は思います。

ドミニク
素晴らしい。
群体としての自己存在というかそういうものを、サイエンスやテクノロジーの力も使って、より感じ取れるようになるんじゃないかということですね。

「H.SCHOOL」4/15放送分 「発酵☓IT」小倉ヒラク アーカイブ動画はこちら
https://www.houdoukyoku.jp/archives/0028/chapters/27980

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