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一人ひとりに合わせたコース料理で「ミシュラン一つ星」に。気鋭料理人から学ぶ“仕事術”

「料理は、ビジネスパーソンの必修項目だ」第2回

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Jun 13, 2017 by editors room Reporter

3 Lines Summary

  • ・“100%の気遣い”をお客さんに提供するのが料理人の仕事
  • ・一人ひとりに合わせたコース料理でミシュラン一つ星に
  • ・「10人お客さんが来たら、10人全員が納得する料理を出したい」

人気店の料理ほど、文字通り“ひと味”違う。一流の料理人は、ビジネスマンにも通じるような“仕事哲学”を持って日々料理に向き合っているのではないだろうか。そこで、老舗日本料理店「なだ万」で13年の修行ののち独立し、ミシュランで一つ星を取得した予約困難店「季旬 鈴なり」の若き店主、村田明彦さんに話を伺った。

“100%の気遣い”をお客さんに提供するのが料理人の仕事

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東京・門前仲町で、祖父がふぐ店を経営していたという村田さん。小さい頃からものを作って人に食べさせるのが好きで、高校に入ると祖父の調理場を手伝い、自然と「自分が店を継ぐ」と思っていたという。

高校卒業後は、「外の世界を見たほうがいい」という祖父の勧めで、老舗「なだ万」に就職。修行は厳しいものだったという。

「一番初めは、何をすればいいか分からないから厨房に立っているだけ。自分から『やらしてください』と機会を作る世界だなんて全然知らないから。上の人に言われるまでぼーっと立っていて。それじゃ怒られるから、厨房をうろうろ歩いていたら、それでも怒られる。しばらくしてからは、“これやっていいですか?”と先に声をかけるようにした。そうすると上の人は可愛がってくれるんだけど、先輩は面白くないから仕事をさせてくれなったりして、理不尽だと思うこともありました。最初は料理云々の前に、精神修行ですよね。これはやってはいけない、とか、したほうがいいとか。どうすれば上が喜んでくれるか、どうすればきれいに見えるか、とか」

「辞めてやろう」と何度も思ったというが、今振り返ると、そんな下積みの経験こそ、料理を仕事にしていく上で大切だと感じているそうだ。

料理とは、“自分のことよりも、人のこと”。店を持てば、お客さんのことを第一に考え、100%の気遣いともてなしをお客さんに提供しなければいけない。下積みが長かったからこそ、お客さんとの接し方や言葉遣い、いろいろな気配りができるようになったと思います。今入ってくる若い子に同じ指導の仕方をしても理解してもらうのは難しいかもしれませんが、自分のことより人のことを考えられるようになってほしいなと思います」

職場の評価を気にして、本来の料理のあり方を忘れていた

修行を重ね、やがて献立を書いたり、後輩の世話を任されたりするまでに。しかし意外にも、勤めているときは、「お客さんのために美味しいものを作ろう」とは一度も思ったことはなかったという。

「勤めているときは、調理場で認めてもらいたいから美味しいものを作ろうとしていた。もちろん、お客さんから『美味しかった』という声を聞くのは嬉しかったけど、調理場からでは顔も見られない。それよりも、下の子に良いところを見せたいとか、料理長に『美味しい』と言われるために一生懸命でした」

“顧客”よりも、職場の評価を気にしてしまう——。ビジネスマンにも同じ経験をしたことのある人は少なくないだろう。そんな村田さんが、「お客さんのために料理を作りたい」と思ったのは、さらに視野を広げられてからだという。

「10年以上勤めていると管理の仕事を任されるようになり、だんだん自分で料理ができなくなってくる。そのとき、『お客さんに美味しいものを食べさせたいのに』という気持ちが出てきたんです。そして、自分で店を出そうと思いました」

一人ひとりに合わせたコース料理でミシュラン一つ星に

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2005年6月、13年勤めたなだ万を退職し、同年12月、新宿・荒木町の小さな路地に「季旬 鈴なり」をオープン。最初は、コースではなく一品料理を中心に献立を作っていたという。

最初は自分の持っているものを全部出そうとして、見た目がきれいな料理とか、変わった食材を使おうとしました。でも、ここのお客さんは肉じゃがとか魚の焼いたものとか、自分が分かる料理しか食べないんです。赤坂や六本木ならまた違ったのかもしれませんが、このあたりのお客さんって、ここの落ち着いた雰囲気とか風景とかが好きで来るから、奇をてらったものは好まない。その土地のお客さんに美味しいって言ってもらわないと、商売は成り立たない。そう思って、開店から1カ月もしないうちに料理を全部切り替えました。チーズや洋の食材を使うにしても“隠し味程度”に少しだけ、やりすぎないようにアレンジしました」

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自己満足で仕事は成り立たないということ。こうして、徐々に常連客がつくようになった。すると客から「一品料理よりもコースの方がいい」という意見が増え、5年目に一品料理をやめてコース料理だけに切り替えた。

「一品料理だけ作っていた方が、実は楽しいんです。けれど、お店には高齢のお客さんも、若いお客さんもいる。さらに食べ物の好みも、健康状況も違う。そういうことを考えていると、一品料理より、コースの方が一人ひとりに合わせた料理が作りやすい。体に入ってくるものによって毒にもなるし、健康にもなる。そういうことを考えていたら、やっぱりバランスの取れたコースの方がいいのかな、と」

その後、お店は予約が取れない人気店に。ミシュランの一つ星も獲得した。

「10人お客さんが来たら、10人全員が納得する料理を出したい」

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「和食ってハードルが高いと感じるかもしれないけど、結局は人の食べる“ごはん”。カジュアルな感じで、若い人にも気軽に食べに来てもらいたいと思っています。良い食材を使って、高いお金を取ればいいんでしょうけど、それじゃつまらないですから」

「鈴なり」では、7500円のコースから用意。伝統的な和食の中に、やりすぎない程度にアレンジが加わった村田さんの料理を、幅広い世代が楽しみにやってくるという。

「よく『10人来て、10人が美味しい料理よりも、10人が来て7、8人が美味しいという料理の方が美味しい』って言ったりしますけど、自分は、10人が来たら、10人が納得する料理を作りたいなと思っています」

あえて定説に挑戦し、妥協のない仕事をする村田さん。その姿勢から学ぶべきところは、ビジネスマンにも大いにあるのではないだろうか。

買ってきたものでもいい。大切なのは『食べてもらいたい』という気持ち

最後に、家庭料理のレシピ考案や料理番組への出演などにも積極的に取り組む村田さんに、普段料理をしないビジネスマンでも家族を喜ばせるためにできる、台所での振る舞い方のヒントを尋ねてみた。

「日曜日に洗い物だけ手伝うとかでもありだと思います。料理を作るとしたら、カレーライスとか野菜炒めとか、奇をてらわないものでいいと思うんです。得意な料理でも、まずい料理でも、どこかで買ってきた惣菜を温めるだけでもいいけど、相手に対して『食べてもらいたい』『楽してもらいたい』と思う、その心がけが大事なんだと思います。自己満足じゃダメ。無理やり作るならやらないほうがいい。ワンマン経営者じゃないのだし、相談し合って『一緒に作ろうと』と声を掛けてあげることが大切なんじゃないですかね」


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文=周東淑子

村田明彦
1974年東京都生まれ。祖父がふぐ屋を経営していたことから料理人を志す。老舗「なだ万」で13年間修業を積み、2005年、新宿区・荒木町に「季旬 鈴なり」を創業。本格的なコースをリーズナブルに提供し、老若男女から高く支持されている。スパイスやチーズといった和食ではタブーとされる食材も柔軟に取り入れ、古典に縛られないオリジナルの料理を追及。予約困難な人気店となり、ミシュランの1ツ星も獲得。簡単なレシピ開発も得意で、テレビをはじめ各種メディアでも活躍中。農林水産省「和食給食応援団」のメンバーとして和食文化の振興、「チームシェフ」の一員として地域活性化にも取り組んでいる。

料理は、ビジネスパーソンの必修項目だ
vol.2

一人ひとりに合わせたコース料理で「ミシュラン一つ星」に。気鋭料理人から学ぶ“仕事術”(この記事)

4.5
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