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若くして「がん」に…その時、死に直面したサバイバー達がいま伝えたいこと
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若くして「がん」に…その時、死に直面したサバイバー達がいま伝えたいこと

特集「もう、『がん』をむやみに怖がらない」第5回

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Jun 23, 2017 by editors room Reporter

3 Lines Summary

  • ・がんを経験して、健康や仕事、生き方と向き合った
  • ・悔いのない人生を送ることの大切さを知った
  • ・がん治療を経験して、夢を見つけた人もいる

がんに直面して、人は何を思うのか

早期がんでも、進行性がんでも、自分のがんに直面して死を意識しない人は恐らくいないだろう。がんを患ったことで苦しい治療を乗り越え、自分の命と真正面から向き合って、大きく人生観を変化させた人たちがいる。一体、彼らの心中にどんな変化が起きたのか。2人のがんサバイバーに話を伺った。

みんなと同じように食べられない苦しみ

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1人目は、現在日経BP社でマーケティング戦略研究所上席研究員を務める品田英雄さん。ラジオ局でディレクターを務めたのち、週刊誌創刊のため日経マグロウヒル社(現・日経BP社)へ1987年に入社。翌年の創刊直前、31歳で胃がんが発覚する。胃を全摘して職場へ復帰。現在まで再発なく、今年でがんサバイバー歴30年を迎える。がんを経験して、どんなことを得たのだろうか。

「ある日、同僚と飲んだ帰りに暗い場所で吐いたんです。その時、少し血が混じっているような感じがして、医療センターへ行くと十二指腸潰瘍の診断を受けて入院を余儀なくされました。その後、精密検査で胃がんが判明しますが、当時は本人ではなく家族への告知が主流だったので、私ががんを知ったのは手術後でした」

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がんの罹患部は胃の上部だったため、手術で胃を全摘。ロールーワイ法という再建術で、品田さんの食道と小腸がつながれ、十二指腸側は閉鎖された。

がんを知らされてショックでしたが、それ以上に胃がなくなった苦しみが大きかった。食事をすると食べ物が一気に小腸へ到達するため、ダンピング症候群(発汗、動悸)を起こしたり、食べ物が逆流する逆流性食道炎も併発してとても苦しかったですね」

がんの治療は順調に進み、3週間後には退院。再発防止の抗がん剤(錠剤)を飲みながら、職場へ復帰した。しかし食べる時間が変則的になり、みんなと一緒に食事に行くことは難しくなった。1度に食べられる量も減り、62kgあった体重は52kgまで減少。痩せる恐怖や栄養を取れない不安にも襲われた。

「栄養を摂ろうと高カロリーの食事ばかり食べた時もありましたが、体に悪いことはするべきではないと気づいて。がんになった原因は、それまでの生活スタイルや考え方に不自然な部分があったから。ラジオ局では激務をこなしていたし、小さい頃から体が弱かったことを忘れ、お酒や夜更かしなど健康から程遠い生活をしていました。がんを経験して、再発の怖さやその他の病気にも敏感になり、食生活や運動など、体にいいことを心がけるようになりました。正直、いまの僕は健康オタクといっても過言ではないですね(笑)」

こうした肉体的な苦しみと並行して、精神的な悩みも生じた。入院期間中、自らの体験に加え、仲良くなった入院患者が亡くなる様子を目の当たりにしたことや、復帰後に職場の後輩を肝臓がんで亡くしたことで、死をとても身近に感じるようになる。

「昨日まで元気でも、あっという間に終わりを迎えてしまう人間の儚さを知り、“生きる”とは一体どういうことなのか?と、真剣に考えるようになって。人生はいつ終わるかわからない、だから納得のいく人生を送りたい、と思ったんです。職場に対しては、病気になった自分を再び受け入れてくれたことに対する感謝の気持ちがあって、復帰後はそれまで以上に一生懸命取り組んでいましたね」

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その後、1997年に月刊誌『日経エンタテインメント!』を無事に創刊させ、編集長として意欲的に仕事に取り組む一方で、人生は仕事がすべてじゃないと思う気持ちも生じていた。仕事とプライベートを分けて考えるのではなく、人生のすべての時間を楽しんで生きたいと願った。

「あれから30年経ちますが、いまは精神的な安らぎと食事、運動の3つでバランスをとり、体と対話しながら、いつも心地良い状態でいられるよう調整しています。がんの治療中もそうですが、生きる上では心を落ち着かせることが大切。アメリカでは、がんに打ち克つ!なんて精神があるけれど、それは力み過ぎな気がします。力を抜いているけれど、前向きな気持ちを保っていくという精神が日本人の性には合っているような気がしますね」

品田さんが創刊させた「日経エンタテイメント!」は、すでに20年目を迎える。品田さんはがん治療を乗り切り、創刊誌を成功させた後、テレビのコメンテーターやラジオパーソナリティーとしてさらなる活躍を遂げた。もちろん、がんにはならないに越したことはない。しかし、品田さんはがんをきっかけに、体の健康や心の安定、仕事や生き方と真正面から向き合い、いまも自らが納得のいく人生を送っている。

がん治療で腎臓を失い、人生の夢を見つけた

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2人目は、東急エージェンシーで勤続11年目を迎える軍司和久さん。22歳で精巣腫瘍を告知された。幼少期に患った骨髄異形成症候群の影響で、腫瘍摘出手術後の抗がん剤治療が難航するも、最終手段として行った転移部の摘出手術が成功。告知から1年後には、大学院に復学し、東急エージェンシーに就職。現在、がんサバイバー歴13年を迎える。若くして死に直面した経験を糧に、将来の夢も見つけたというポジティブな体験談を聞いた。

「大学院に入って間もない5月に激しい腹痛が1週間ほど続き、泌尿器科で検査をしたところステージ2Bの精巣腫瘍と告知されました。後腹膜リンパ節と腎臓に転移があり、腹痛を引き起こしていたのです。いきなりのことでショックを受けた一方、異常な腹痛の原因はがんだったんだ、と冷静に受け止めている自分もいました。5歳の頃、白血病になる可能性の高い骨髄異形成症候群を生まれつき患っていることが発覚し、子供心に死を覚悟していた時期があって。それ以来、悔いのないように生きようと思ってきたので心構えはできていたのかもしれません」

告知から3日後に手術を予定していたが、治療方針について主治医の知識に不安を感じたという軍司さん。インターネットで治療法を調べたところ、「BEP」という3種の抗がん剤治療が主流のなかで、2種の抗がん剤を使う「EP」という40年前の治療法を提示されていることに気づく。

「セカンドオピニオンが必要だと感じ、初めの病院で摘出手術だけを受け、がんセンターを再受診したところ、2Bと診断されたステージは3Aであり、標準的化学療法である「BEP」でも助からないほど進行していることを告げられました。ただ、『日本で当病院だけが行っている救済化学療法「VIP-VB」を受けた14人の患者さんは、いまも全員生きている。一緒に頑張ろう』と先生に言われ、すごく勇気付けられました」

そこから薬剤投与が始まるも、骨髄異形成症候群の影響で100%の投与ができず、75%の量で治療を開始。しかし、通常の4クールを終える前に骨髄が限界を迎え、もう一つの救済化学療法「TIP」に切り替えた。そしてこれ以上の抗がん剤治療は難しいという主治医の判断のもと手術に踏み切り、片方の腎臓を全摘するなど転移箇所を切除した。

「死を覚悟した時期もありましたが、ポジティブな人間なので悲観はしなかったですね。むしろ、22歳でがんを経験したことは自分の強みだと感じ、この若さで死に直面した自分がどう感じるかを発信したいと思ったんです。闘病記としてブログを始めると、勇気付けられた、感動した、と大きな反響をもらうようになり、1日1000アクセスを記録するまでに。ブログを見た知らない人がお見舞いに来ることもありました」

自分の闘病記が見ず知らずの人の心を動かした経験を経て、いつ死んでも悔いはないと思ったという。手術後、2年以内に再発する可能性は70%と告げられるも、寛解。翌年の4月には大学院へ復学し就職活動も成功して、現職場で11年目を迎える。

「睾丸と腎臓の摘出により、治療後は激しい運動ができなくなりました。大好きだったサッカーも、リスクがあるため治療以後は一度もやっていません。今の世の中は、闘病や治療で心と体の両方に足枷を背負っても、日常生活やスポーツで健康な人と同じフィールドに立たされてしまう。だからスポーツを通して、がんを経験して良かったと思える機会を作りたいと考えるようになりました。夢は、“がんサバイバーのためのオリンピック”を開催すること。いつか実現して、がんを経験してよかったと思える人が少しでも増えたら嬉しいですね

若くしてがんと向き合ったことで、大きく人生が変わったという軍司さん。ポジティブな思考が、前向きな行動を生み出し、自分の人生をも好転させた。もちろん健康でいるにこしたこはないが、がんは人生観を一変させるような感情をもたらし、多くの人が悔いのない人生を送るべきということに気づく。それは、病からの貴重な贈り物なのかもしれない。


文=井上真規子(verb)
人物写真=片桐 圭

もう、むやみに「がん」を怖がらない
vol.5

若くして「がん」に…その時、死に直面したサバイバー達がいま伝えたいこと(この記事)

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