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ネットショッピングは不便!それ、「体験」しないで買うの?

特集「未来はどうなる?買い物のカタチ・買い方のカタチ」第5回

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Jul 14, 2017 by editors room Reporter

3 Lines Summary

  • ・89年には、システムキッチンのショールームで導入されていた
  • ・空間的な感覚を通した高度なシミュレーションがVRの魅力
  • ・「モノ」を買うにはまだまだ課題もあるが、「体験」を買うならVR

VRによる買い物体験が可能となる実証実験が、様々な企業でスタートしている。VRで買い物できるようになるというのは何やら楽しそうだが、どんな利便性があるだろう?

今回は、おもにシステム工学やバーチャルリアリティの研究を行う、東京大学大学院 情報理工学系研究科・廣瀬通孝教授に話を聞いた。

1989年からVRは注目されていた
システムキッチンのショールームで利用

ここ数年でVRが注目され始めた、と思いきや、廣瀬教授いわく「『バーチャルリアリティ』という言葉は1989年に登場した」とのこと。

「日本で先駆けてVRによるデモンストレーションを行ったのは、松下電工(現・パナソニック)です。システムキッチンの売り場でバーチャル体験ができるというものでした。システムキッチンは、この商品とこの商品を組み合わせるとか、高さはこれくらいでこの幅はいらないとか、チューニングを繰り返すもの。その度に、該当の商品を持ってくるのは大変なので、VRを使ったシステムをショールームに設置したのです」(廣瀬教授、以下同)

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しかし、「当時の技術では、圧倒的に表現力不足でした」と廣瀬教授はいう。例えば、水道の蛇口をCGで表現するにしても、つまみ部分はただの丸、蛇口から流れる水も水色の棒が落ちるだけといったように、記号的な映像だけだったそう。今では、当時の映画に使われていたくらいのクオリティの光景が、VRの世界で再現できるようになった。

「例えば飛行機という機械が世の中に普及する歴史を考えてみましょう。まずは、どういう機械を作れば空を飛べるかを考えなければなりません。しかもそれが飛んだとしても、その機械にすぐに乗ろうと考える人はそれほど多くはないでしょう。飛行機のメーカーはまず技術者を育成し、研究のコミュニティができるまで数十年を費やしています。それはVRも然り。第1期(89年)から30年ぐらい経ちますが、それは人材育成の時期ともいえるのです」

つまり、今のVRブームは、当時の若手研究員たちが育ち始めた成果ということ。また、良質なものが安く作れるようになったことも一因だ。

「現在、HMD(ヘッドマウントディスプレイ…VRを体験する機器のこと)は数万円程度で購入でき、画質もハイビジョンクラス。89年頃にもHMDはありましたが、300万円くらいするのに分解能は100×150程度。粗すぎて文字はぼやっとしていました」

当時は、映像の供給も難航を極めていた。3DCGでのモデリング作業など、相当なプログラミング作業が必要だったが、今では全天周カメラで360度の空間映像をコンピュータに入れるだけ。とても楽に再現出来るようになったというわけだ。

“VRならでは”の体験を通して、
より多くの情報を得ることが出来る

では、そんなVRならではの特徴とは何なのか。「空間的な感覚を体感できること」と、廣瀬教授。

「例えば部屋を借りるときを想像してください。まず不動産屋で写真や間取り図を見ると思いますが、写真は空間を切り取るだけで、部屋の広さまではわかりませんよね。VRでは、グルっと見渡せるので、空間感覚や身体感覚を体感しやすいのです。写真では広く見えたけど、内見に行ってみると意外と狭いと感じることはありませんか? 写真だけでは、空間的な感覚はなかなか伝わりません。VRなら、眺望やまわりの空間など細かい部分まで伝えられます。高度なシミュレーションといったところでしょうか」

これはネットショッピングにも言えること。今のネットショッピングでは、写真は見られても実際に手に取ることはできない。

「90年代はじめごろ、VRで自動車のモックアップを作ってみたことがあります。CGの世界の中で、目の前に自動車が出てきます。近づいていってドアを開けると、実際に車中に入り込め、走り出すこともできる。ハンドルを握ることもできる。これは普通の写真や模型ではできないこと。VRでは写真や動画を超える体験ができるのです。今のウェブショッピングでは、手に取ってみたいと思ってもできないでしょう」

このように、VRにおいて重要なのは、「体験」。廣瀬教授は、その理由を以下のように話す。

「自転車の乗り方は、説明書を読んでもわからないものです。実際に体験したり、身振り手振りを交えたりしてわかることもたくさんあります。頭で理解することと、体で理解することは違いますから」

「モノ」を買うよりも「体験」を買う?
触覚や味覚など、まだまだ課題も

最後に、VRを使って買い物をするとしたら、どんなものが向いていて、どんなものが向いていないのかを聞いてみたところ、「触り心地を重視するものは向かない」とのこと。いったいどういうことだろう…?

「VRでは、視覚や聴覚においては比較的よくできていますが、“触覚”においてはまだまだ。先ほど例に挙げた自動車もそうですが、実際に乗り込め、座れるとはいうもののリアルには何もないので、本当に座ろうとすれば転びます。ハンドルを握れるというのも、反力がない状態。触覚的なものをどう感じさせるかが課題です。洋服は生地の柔らかさなど、触り心地も選択の重要な要素ですので、不可能ではありませんが、まだ難しいと思います」

その不足した触覚を補うためには、リアルなものと、バーチャルの合わせ技・ミックストリアリティが有効だそう。汎用のものを用意して、触れた感じ“だけ”を補う方法だ。四角いテーブルを三角に見せることすら可能なので、触覚さえ補えばよりリアルな体験ができる。

一方で、「体験を買う」ことは今すぐにでも可能という。その一例として、文化財などを挙げてくれた。

「まだ実用化はされていませんが、文化・芸術の入り口としてVRを使うことはタイムリーと思います。私は今、鉄道博物館と組んで『御料車』(皇族が利用される鉄道車両)の仕事をしていますが、古いものは芸術的価値があり、重要文化財に指定されているものもあります。そのため、普段は絶対に内部を見ることができませんし、入れたとしても照明はつけられません。そういったものを最良の状態で再現するなら、バーチャルのほうがいい。もちろん、クオリティが高くないといけないし、その意味でまだ100%満足のいくシステムはできていませんが、そういった体験を売るVRは、今後有望と思います」

さらに、「聖地探訪や旅行といった『行くこと自体に意味がある』体験を買う場合、例えば高齢化にともない体が不自由になった時など、VRの活用は需要が高まるのでは」とも。

最近では、スマホを使ってVR体験ができるアプリやVRゴーグルもたくさん出ている。これらを通して、より身近にVRの存在を感じられるし、すでにデジタル機器に慣れ親しんでいる人が多くデジタルへの抵抗も薄れてきていて今後ますます広がっていくだろう。

「百聞は一見に如かず」ではなく、VRの場合は「百見は一体験に如かず」。VRを使った“体験を買う”買い物は、来たる超高齢化社会においても、活躍するのではないだろうか。

■取材協力
廣瀬通孝
http://www.cyber.t.u-tokyo.ac.jp/ja/

取材・文=明日陽樹/考務店

未来はどうなる?買い物のカタチ・買い方のカタチ
vol.5

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