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グラフィティで社員研修。ベルリンのスタートアップが企業とアートを繋ぐ

アーティストに光を当てる「Book a Street Artist」

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Jul 22, 2017 by Sato Yuki Reporter

3 Lines Summary

  • ・街中でアートが溢れるベルリン
  • ・アーティストはプロモーションが苦手
  • ・企業のアート需要は拡大中

ベルリンは、至るところにアートが溢れている。アパートの外壁に描かれるグラフィティ、ストリートで演奏するミュージシャンやパフォーマー。彼・彼女らの多くは決して「有名」ではないものの、その個々のユニークさとエネルギーは観客や聴衆を魅了する。表現の場を渇望するアーティストのエネルギーがベルリンという街の個性を特徴づけているともいえる。

一方で、多くのアーティストが苦手とするのはプロモーションだ。自分の作品や活動の認知度を上げるための活動にはそれほど時間を割かず、そのためその活動や才能が知られないまま埋もれていることも多い。

そんなアーティストにより多くの機会を提供したいという二人の創業者の思いから始まったスタートアップが「Book a Street Artist」である。

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Copyright: blog.bookastreetartist.com

2012年、ポルトガルの首都リスボン。ストリートアーティストの活動について研究をしていたドイツ人女性シャーロッテ・シュペヒトと以前リスボンに住んでいたマリオ・ルエダが共通の友人を介して出会う。ストリートアーティストについて話をするうちに、アーティストがもっと活躍する場を作れるのではないか、というアイデアが生まれた。二人は早速ストリートに繰り出して、リサーチを開始した。

リスボンのストリートにはアーティストがたくさんいる。グラフィティアーティスト、ミュージシャン、自分の体にペイントして像のように静止する「リビング・スタチュー」など。二人はこうしたアーティストたちに直接話しかけ、彼・彼女らに対する理解を深めていった。

幾人ものアーティストの話を聞いたのち、共通の問題を抱えていることに気づく。彼・彼女らはプロモーション、ブランディングが苦手で、自分をどう売り込めばよいのかを模索していた。

二人はabout.meというポートフォリオサイトを、アーティストに代わって作ることで、彼らのプロモーションを支援することからスタートした。ストリートアーティストを支援するPlugged-inというNPOを立ち上げ、その活動は徐々に口コミで広がっていった。そんな時、リスボン在住の進歩的な牧師から、教会にグラフィティを描いてほしいという依頼があった。二人はグラフィティアーティストをマッチング。その作品は現地メディアの注目を集め、企業からのコンタクトが急増する。ソーシャルアワードも受賞するなどして、二人の活動の注目度は増していった。

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リスボンの教会の壁に描かれたグラフィティアート

だが、リスボン市内だけで活動していた二人は、この活動を事業として成長させる上での限界を感じていた。

2015年。資金繰りに詰まった二人は、新たな成長の機会を求めて、ベルリンに本社を構える大手メディア企業のアクセル・シュプリンガーが運営するアクセラレータプログラム Plug and Playに参加する。コーファウンダーであるシュペヒトの出身地であること、そしてドイツのマーケットに可能性を感じたことが理由だった。

Plug and Playでは、ビジネスのイロハを徹底的に学ぶ。投資家向けに事業について説明するピッチの方法、ユーザー数を成長させる方法など、アクセル・シュプリンガーの有するネットワークからメンターシップを受け、サービスを磨いていった。

このアクセラレータプログラムを経て、二人は会社として「Book a Street Arist」を立ち上げ、アーティストを検索できるオンラインプラットフォームをリリースした。アーティストを探している人は、まずこのオンラインプラットフォームから検索をかける。目的を入力して検索すると、アーティスト候補が表示される。気になるアーティストが見つかれば、必要とする日時や予算、目的などの詳細情報を入力して送信。Book a Street Artistのチームの元に、その依頼内容が届き、アーティストとの調整が始まる。顧客とアーティストの両方の希望が一致すれば、マッチングという流れだ。

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現在、登録しているアーティストは200名。4割がミュージシャン、4割がビジュアルアーティスト、2割がパフォーマンスアーティストだ。これまでに1500件の問い合わせがあり、毎日1件ほどのペースでマッチングをしている。料金の2割を手数料としてとることで収益を上げるというビジネスモデルだ。

オフィスの壁にグラフィティを描いてほしい、イベント会場用にアート作品を作ってほしい、結婚式で演奏をしてほしい。クライアントからの依頼内容はさまざまだ。

ベルリンでアクセラレータプログラムに参加したことで広がっていったスタートアップとのつながりも生かされた。ベルリンを拠点に欧州で拡大中のモバイル銀行を運営するN26からは、新オフィスの壁にグラフィティを描いてほしいという依頼があった。「彼らは新しい銀行を作ろうとしているから。エッジを求めているんだ」とコーファウンダーのルエダはいう。

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Copyright: YouTube

ポルトガルの大手エネルギー企業からは、社員向けにグラフィティワークショップをやってほしいという依頼があった。グラフィティアーティストが現場に派遣され、社員にグラフィティの描き方を披露する。社員がクリエイティビティを発揮できる機会を作りたい、というのが企業の目的だ。

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Copyright: blog.bookastreetartist.com

欧州から、はるかかなたの中国まで数名のアーティストを派遣したこともある。フォルクスワーゲンから、中国で開催されるモーターショーでダンスパフォーマンスをやってほしいという依頼だった。

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Copyright: blog.bookastreetartist.com

企業が「Book a Street Artist」に依頼する理由の一つは、価格の安さだ。従来型のアーティストエージェンシーを通して、アーティストを予約するよりも抑えたコストで手配することが可能であるという。

一方で、企業からの問い合わせが増える中で直面しているチャレンジの一つは、アーティストと顧客の需給バランスをどう取るかだ。アーティストの質を担保すると同時に、顧客にコンセプトを正しく理解してもらうことも必要だ。自分の表現へのこだわりが強いアーティストは特に、金銭的な報酬だけでは動かない。表現をしたいアーティストと、顧客のニーズを理解してうまくつなげることは想像以上に難しいという。プラットフォームの作り手の誰もが考えなければならない点だ。「商品」ではないアーティストだからこそ、星の数で評価をつけないようにするなど、アーティストの意識や価値観に配慮したデザインにする必要もある。

同時に登録するアーティストの質も担保しなければならない。現在、登録できるのは既に登録済みのアーティストから推薦があったアーティストか、またはチームの審査に通らなければならない。登録を申請したアーティストのうち、審査に通るのは現在半分程度であるという。

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ある女性は、恋人からのプロポーズに対してボディペイントで返事をするため、自らの身体にウェディングドレスを描いてほしいとアーティストに依頼した

オンラインプラットフォームも改善中だ。より自動化して、効率性を高めるべく模索している。いずれは顧客とアーティストが直接やりとりをできるようにしたいともいう。

かつて、アーティストの多くは、エージェンシーによって管理、マッチングがされていた。その仕組みの元では実現されにくかった、価格や内容の透明性を実現することがこのプラットフォームの目的でもある。それは、個々のアーティストに影響力を与えるものでもあり、そして個性的なアーティストたちの活動に光を当てる試みであるともいえる。

「Book a Street Artist」のチームは、ベルリンの中でもとりわけ多くのストリートアーティストが集まるクロイツベルクに小さなオフィスを構え、現在は10名のチームで活動中だ。シードラウンドの資金調達を終えて、現在は新たな投資家の参加を調整中であるとのこと。個々のアーティストに光を当てるというミッションに共感してくれた「ビッグな投資家」の協力も得られそうだとルエダは明かしてくれた。これからさらに「Book a Street Artist」の活動が広がっていくことを期待したい。

2017/07/18放送「ホウドウキョク×FLAG7」ワールド・テック・リポート
番組のアーカイブはこちら
https://www.houdoukyoku.jp/archives/0009/chapters/28936

ワールド・テック・リポート
vol.9

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