芥川賞・直木賞発表!受賞作は新人『影裏』とベテランの『月の満ち欠け』
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芥川賞・直木賞発表!受賞作は新人『影裏』とベテランの『月の満ち欠け』

受賞作を書評家・倉本さおりさんが解説。

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Jul 21, 2017 by FLAG7 Reporter

3 Lines Summary

  • ・ほとんどケンカ状態で選考
  • ・受賞作「影裏」新人らしからぬ技巧的な作品
  • ・直木賞候補作「BUTTER」は柚木麻子の意欲作だった

選考委員の高樹のぶ子氏が会見で芥川賞選考経過を説明した。

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ほとんどケンカ状態で、その当事者が私でしたから、反対した委員の意見を集約して説明できるかどうか、甚だ心もとない限りです。4つの中で落ちていった順番は、最初に『真ん中の子どもたち』、次に『四時過ぎの船』。最後に『星の子』と『影裏』が残り、決戦投票となりました。

受賞作について申し上げます。
色んな要素について真反対の意見が出ました。3.11の大震災を踏まえて人間の内外の崩壊を描いたもので、大震災を小説にするにはこういう対応しかないと強く推しましたが、3.11が出てきては駄目だという意見がありました。

主人公が性的マイノリティであるのは大きな問題ではないと思いましたが、そう思わない選考委員は非常に多かったです。この点でも対立しました。

自然描写の筆力を私は買いましたが、反対意見も出ました。技巧的であるという意見も出て、これを良しとするか駄目だとするか、それぞれの要素に賛成反対がありましたが、最終的には過半数を超えまして、これを推した代表として報告できるのは嬉しいです。

次点の『星の子』でも非常に対立がありました。「緩いんじゃないか」「子供の視点でしか描けないんじゃないか」という考えを私は持っておりますが、宗教、家族を含めて人を信じることについて描いているんだと、それをよしとする選考委員も何人かいました。閉じ込められた子供の世界を描き切っているという賛成意見もありました。

最終投票では明らかに沼田さんの方が得点はあり、次点となりました。

芥川賞候補はこちらの4作。
・今村夏子『星の子』(小説トリッパー 春号)
・温又柔『真ん中の子どもたち』(すばる 4月号)
・沼田真佑『影裏(えいり)』(文學界 5月号)
・古川真人『四時過ぎの船』(新潮 6月号)

そして、直木賞候補はこちらの5作だった。
・木下昌輝『敵の名は、宮本武蔵』(KADOKAWA)
・佐藤巖太郎『会津執権の栄誉』(文藝春秋)
・佐藤正午『月の満ち欠け』(岩波書店)
・宮内悠介『あとは野となれ大和撫子』(KADOKAWA)
・柚木麻子『BUTTER』(新潮社)

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芥川賞は下馬評では今村夏子「星の子」だった

速水健朗:
第一報をうけてどうでしょうか?

倉本さおり:
正直、皆キョトンとしたと思います。

速水:
予想されていた今村夏子さんの『星の子』ではなかったからですね。それだけ期待されたのはなぜでしょうか。

倉本:
今村さんは前回も『あひる』という作品で候補になっていて、選考委員の評価もおおむね高かったんですが、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』が強すぎて落ちてしまったんです。だから今回はとるんじゃないかと。

加えて、芥川賞は普通、五大文芸誌である文藝春秋「文學界」、新潮社「新潮」、集英社「すばる」、講談社「群像」、河出書房新社「文藝」から選ばれます。前回の「あひる」は「たべるのがおそい」という個人的に出版された文学ムック、今回の『星の子』は朝日新聞出版「小説トリッパー」からと、わざわざ五大文芸誌ではないものから選考しているので、これはもうとらせるつもりなんじゃないかと予想されていました。

「影裏」はどんな作品?

速水:
影裏』沼田真佑さんはどういう方なんでしょうか。

倉本:
作家デビューの登竜門である文學界新人賞を今年受賞して、その作品がそのまま芥川賞にノミネートされました。

速水:
どういう作品なんですか?

倉本:
主人公は30過ぎの男性です。日浅という男性の同僚と仲良くするんですけど、ある日突然、日浅が会社を辞めて、怪しげな団体に就職して勧誘してきたりするようになって、それまでの関係が軋み始めるんです。そのうち実は団体のノルマがこなせなくて汲々としているというのを聞いたところで震災が起きて、消息を絶ってしまう。彼を探すうちに、彼がイメージとは違う男だったことがわかってくる。

「影裏」は技巧的

速水:
高樹さんが言っていた「技巧的」というのは?

倉本:
技術がありすぎて分かりやすく物事を描かないゆえに、読み慣れてない人には「何が起きたの?」ってキョトンとしてしまう。プロの作家でさえ何回か読んで気付くことが多いという。

速水:
お笑い芸人がとったり、話題性が求められてた部分もあったと思うんですけど、ド新人というところが話題になるのかな。

倉本:
ド新人なのにすごく技術を持った人が現れたっていうことと、LGBTに関することがさらっと出てくるんです。この手腕がポイントだと思います。

速水:
その辺は文学のトレンドのテーマなんですか?

倉本:
注目されてるテーマではあります。でも前面に押し出さずすっと挿し込んできたタイプはいなかった。

速水:
受賞に反対する意見もあったみたいですね。

倉本:
物語が転じるフックに大震災を使ったことに拒否感を示す方もいるんだろうなと。

速水:
沼田真佑さんは僕は知らなかったんですが、デビューしたばっかりで、一作目で芥川賞をとった。将棋の藤井くんもそうですけど、新星が出てくる流れがあるかもしれないですね。

女性の生き辛さを描いた柚木麻子「BUTTER」

速水:
直木賞の方もうかがいたいんですが。

倉本:
佐藤正午さんか柚木麻子さんなんじゃないかっていう感じはありました。佐藤さんはキャリアが長くて現在61歳で、こんなに知られている作家なのに実は初めてノミネートだったという。

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速水:
柚木さんの「BUTTER」はこれまでと違う意欲作ですね。

倉本:
これまで何回も直木賞候補になったんですが、多分、今回が1番直木賞に近かったと思います。木嶋佳苗の事件をモチーフにしているんですが、その部分が独り歩きしすぎてしまって。「木嶋佳苗のノンフィクションを書いてるだけ」と言われがちなんですが、木嶋佳苗の事件をベースとしているだけで、今を生きる女性の生き辛さを描いてるんですね。

倉本:
3・40代女性が読んだら「そうだよね」って思うような、ちょっと太っただけでものすごい叩かれるとか、「女を売りにしてる」って言われるわりに身綺麗にしないと突っ込まれるとか、「どうすればいいの?」っていうジレンマがいっぱい書かれています。

世の中の男女を斜めの目線から見ていじるだけじゃなく、どうすれば開放されるというところまで踏み込んでいる。

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FLAG7 2017/07/10放送より。番組アーカイブはこちら。
https://www.houdoukyoku.jp/archives/0009/chapters/28940

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