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SNSに振り回されるあなたを救ってくれる「仏教の知恵」

特集「現代の『呪い』から解放される方法」第5回

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Aug 11, 2017 by editors room Reporter

3 Lines Summary

  • ・現代人の「呪い」とは「価値観の呪縛」である
  • ・心を呪縛する「宗教」はいらない
  • ・SNSも「呪い」のひとつ。反応しないためのヒントとは

人は多かれ少なかれ「思い込み」に縛られて生きている。「若いほうが魅力的」「いい年をして独身なんて恥ずかしい」「平凡な自分は肩身が狭い」…、そんな根拠のない思い込みは時に、自由で多様な生き方を妨げてしまう。いわば、社会にはびこる「呪い」のようなものといえるだろう。


そんな思い込みの呪縛から逃れ、心を解き放つにはどうすればいいのか? 心を解放するエキスパートともいえる「仏教」にヒントを求めるべく、ベストセラー『反応しない練習』の著者でもある、草薙龍瞬(くさなぎ・りゅうしゅん)氏に教えを乞う。

現代人の「呪い」とは「価値観の呪縛」である

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草薙氏は現代人が「呪い」にかかってしまう背景には、ひとつの価値への囚われ、いわば「価値観の呪縛」があると指摘する。


「たとえば『若さ』は、異性にちやほやされたり、社会で活躍して称賛されたりするという点で価値があると見なされます。人は個人的経験や周囲の情報から、そうした価値観を学習します。その価値に執着したときに、“いつまでも若くありたい”“若くなければダメなんだ”という『呪い』にかかってしまうわけです。呪いに囚われた人は往々にして、老いることを恐れ、年老いた人を見下す側に回ります。しかし結果的に、老いゆく自らを苦しめてしまうことになります」(草薙氏、以下同)


本来、そうした価値観は人間が創り出した『妄想』に過ぎないという。しかし、メディアも世間もその妄想を共有しているため、多くの人が知らず知らずのうちに心を束縛されていく。価値観は、個人のみならず社会全体の呪縛でもあるのだ。


「頭の中で勝手に思っているだけのことを、仏教では『妄想』と呼びます。『若さ』という価値も目をつぶったら見えない、ただの妄想でしかありません。しかし、こうした妄想に人間は価値を感じて、それに執着することで苦しみます。そんな『価値観の呪縛』から心を解き放つことを、本来の仏教は目指していたのです」

心を呪縛する「宗教」はいらない

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特定の宗派に属さず、独立系の僧侶として活動している草薙氏。その理由として、仏教が抱える『執着』のジレンマを挙げる。


「宗派に属している僧侶の中には伝統や上下関係、『この修業をしないと住職の資格を取れない』など、さまざまな呪縛に苦しんでいる方がいらっしゃいます。心の呪縛からおのれを解き放つのが仏教の役割だったはずなのに、逆にみずから執着して苦悩している。その姿は本末転倒です。


私も寺に入門したことがありますが、しきたりに囚われた様子を目の当たりにし、失望してインドに渡りました。仏教、いや『宗教』そのものに、ある種の『思い込み』があるのです。『こうあらねば』『これが絶対の真理だ』という思い込みの呪縛です。しかし、本当はこうした呪縛こそ抜けなければいけないものなのです」


本来のブッダの教えは、そうした「思い込みの呪縛」から抜ける方法論を説くものだ。それを実践できれば、あらゆる苦悩から自由になれるという。そのための訓練として、「身体の感覚」と「頭の中で考えている妄想」との違いに気づくことがポイントとのこと。


「思い込みの呪縛は、二つの反応、つまり『妄想』と、その妄想への『執着』からできています。だから、『これは妄想である』『これはただの執着である』と自覚できることが、呪縛を抜け出すカギになります。


そこで、いったん目を閉じてください。その状態で心の内側を観察して、『いま頭の中でこんなことを考えている。これは頭の中にしかないものだから妄想である』と理解します。そのうえで、手のひらでも、足の裏でもよいので『身体の感覚』を、よく感じとってください。実際に手や足を、目を閉じたまま見つめてみると『感覚』があることがわかります。


そうやって感覚に意識を向けて、妄想状態を自覚することで、妄想から次第に解放されていきます。妄想の一種である世間の『価値観』や『宗教』などの思い込みからも自由になれます。どこまで行けるかは練習次第。自由になれた心は、最高に爽快です」

SNSも「呪縛」のひとつ。反応しないためのヒントとは

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思い込みの呪縛は、「心の宿命」みたいなものだと草薙氏は言う。とすれば、現代人がさまざまな「呪い」にかかるのは、当然の結果といえるのだ。インターネットが定着した現代社会ではなおのこと「呪いの力は増している」と語る。


「顕著なのがSNS。ある意味、現代的『呪い』の発信源かもしれません。『フォロワー』や『いいね!の数』など、ユーザーは常に“他人の評価”に晒されます。タイムライン上に流れる無数の投稿が、『これだけ自分は頑張っている、輝いている、あなたはどう?』と煽ってくる。承認欲に駆られた人間は、大勢の他人と同じ土俵に上がって自分も評価されるために頑張ってしまう……。結果的に、『そこから降りられない苦しみ』に縛られてしまいます。きわめて現代的な呪縛といえます」


かといって、SNSがこうまで社会インフラとして確立している以上、完全に距離を置くことは難しい。だからこそ、呪いに惑わされない心の持ちようが必要になってくる。


草薙さんはその手段として「心の状態をよく見ること」を挙げる。


「全ての苦しみや悩みは“心の内側”に生じるもので、客観的には存在しません。宇宙の果てまで探しても、CTスキャンで観察しても見つからない。つまり『幻』でしかないのです。


この幻は、外部の刺激に反応することから生まれます。その時の反応、心の状態に気づけることが大切なのです。ポイントは、快か不快か。もし心が不快を感じていることに気づいたら、『いけない、降りなければ!』『これ以上、反応しないようにしよう!』とハラを固めることです。これは自分の心がけ次第でできます。


結局、思い込みの呪縛というのは、人間が『心の状態を見る』という発想を持っていないことから始まっています。ブッダが教えたのは『心の状態にまず気づけ』ということ。世間の価値観は妄想にすぎない。SNSは時に不快をもたらす。なのに『執着』してしまうから、苦しみに囚われる。


自分を苦しめる価値観や、心を刺激してくる仕掛けに反応して、いつの間にか執着している自分の姿を、はっきり自覚することです。そして、執着状態から抜け出してみせること。そのひとつの練習が『妄想ではなく、感覚に意識を向ける』ことです。これが、現代人が呪縛を抜ける一番手軽な方法です」


仏教の世界で古くから説かれていた『妄想」や『執着』が、世間の価値観やSNSのストレスなど、現代人の「心の呪縛」につながっていたとは驚きだ。仏教が誕生して以来、2500年以上経っているが、人間はいまだ「心の宿命」を脱出できていないということなのだろう。


しかし、ブッダは「心ひとつですべての苦悩から解放される」と説いた。その知恵に従えば、積年の「心の呪縛」から自由になることも不可能ではなさそうだ。呪いは解けるのである。


取材・文=末吉陽子/やじろべえ


【取材先】
▼草薙龍瞬氏
僧侶/興道の里(こうどうのさと)代表。奈良出身。中学中退後、16歳で家出、上京。大検(高認)をへて東大法学部卒業。インドで得度出家後、ミャンマー、タイに修行留学。ビルマ国立仏教大学専修課程修了。仏教を宗教としてではなく「現実の問題解決に役立つ合理的な方法」として紹介。宗派・伝統に属さない独立派の出家僧。
http://genuinedhammaintl.blogspot.jp/


▼著書『反応しない練習』(中経出版 )

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現代の『呪い』から解放される方法
vol.5

SNSに振り回されるあなたを救ってくれる「仏教の知恵」(この記事)

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