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「巻き込まれの恐怖」 現実を直視し、北朝鮮にどう対処するか

北朝鮮情勢の今後について、国際政治と安全保障の専門家、小泉悠(こいずみ・ゆう)氏が解説

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Aug 12, 2017 by Nose Nobuyuki Reporter

3 Lines Summary

  • ・北朝鮮が核・ミサイルの開発にまい進することは明らか
  • ・その目的は体制の維持。ではどんな手段があるか 
  • ・北朝鮮の核が同盟国との仲を裂く懸念

最終目標は体制維持

能勢伸之解説委員:
北朝鮮が核を保有するということは、現実問題としてどういうインパクトを東アジアに与えるのでしょうか?


小泉悠(公益財団法人 未来工学研究所客員研究員):
北朝鮮自身が核を合理的に運用できるのかが問題です。もちろん彼らはアメリカに対する抑止力を確保するために合理的に核を使おうとするでしょう。

でも例えば計算ミスもあり得る。つまりアメリカが北朝鮮に対して軍事攻撃を仕掛けてくるんだと北朝鮮が判断してしまって、実際にはそうでなくても先に核を使ってしまうこともあり得るわけです。

これはインド×パキスタンに対しても言われていて、アメリカとロシアの関係のように相手の核が飛んだらすぐにわかる警戒システムを持っていない国はどこかで疑心暗鬼に陥って変な核の使い方をしちゃう可能性がある。

北朝鮮の核武装はいいわけはない。その一方でここまで核能力を高めてしまった北朝鮮に「さあ、核を完全放棄しなさい」と言うのもたぶん難しい。それなら北朝鮮を核保有国と認めてその上で核軍縮をしようじゃないかという人が現れてもおかしくはない。

これは本当はよくないことですが…でもそういう議論がある程度説得性を持ってしまう可能性がある。


岡部いさく氏(軍事評論家):
北朝鮮に対する核軍縮と言ったって北朝鮮が10発、20発持った段階で「軍縮しましょう」と言って北朝鮮が応じる話ではないですよね。


小泉悠:
おそらくイランの包括核合意のような、ある程度の能力を認めるとか凍結するという代わりに制裁を解除するといった話になると思うんです。
北朝鮮が一番懸念を持っているのは何かというと体制の崩壊です。イラクとかリビアみたいに北朝鮮が崩壊させられること金委員長は一番恐れている。

それを何らかの形で保障するのと引き換えに核能力を制限するとう話になるのでしょうが…
イランの場合はもともと大国であって体制をアメリカがひっくり返しにくるということを最近はあまり心配していないと思いますが、それに比べると貧しくでもっともっと不安定な北朝鮮の核への依存はもっともっと大きいはずです。ゆえにすごく難航するでしょうね。


能勢:
北朝鮮が核を持つことの最終目標は体制維持だということですね。


小泉悠:
だから逆にいうと体制が維持できるような取り引き材料を見い出すまでは、あるいは北朝鮮が核保有国だと認められて、アメリカが軍事力による体制転換を完全にあきらめたと彼らが判断するまでは、核・ミサイル開発に彼らは邁進すると思いますし、多少の制裁をくらったくらいでは止めないだろうと考えます。

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安全保障論の「巻き込まれの恐怖」

能勢:
北朝鮮の核・ミサイル開発にからんで最近よく言われている「デカップリング」ということがありますよね。それを含めて考えると日本はどういう位置にあると判断できますか?


小泉悠:
すごく難しい立場に立たされていると思います。アメリカと当時のソ連の間でかわされた中距離核戦力全廃条約=INF条約は、アメリカとヨーロッパに間のデカップリングだという視点があるんです。

つまりソ連の中距離弾道ミサイルはベルリンやパリには届くけれどもアメリカには届かないわけですね。そうすると、アメリカはワシントンDCを破壊されえる替わりにベルリンを守ってくれるだろうかと。見捨てられるんじゃないかという…これは安全保障論で言う「見捨てられの恐怖」ですね。ドイツを犠牲にしてソ連と手を結んでしますのではないかという議論がある。

一方、今の日本、首都東京が立たされている立場。北朝鮮のミサイルはとっくに射程に入っているわけですからこれまでと変わらないのですが、新たな脅威として北朝鮮のミサイルがアメリカを射程に入れ始め、DCやニューヨークを破壊する可能性が出てきたということ。そうすると日本がアメリカのミサイル防衛に協力することによって、日本が北朝鮮の核攻撃の対象になるのではないかという懸念が浮かびあがるわけです。つまりこの場合は安全保障論では「巻き込まれの恐怖」

デカップリングというのはカップルを引き離しちゃうということですからINFの場合はヨーロッパとアメリカが引き離される懸念、そして今回は日本・韓国とアメリカが引き離される懸念。

そういう懸念を北朝鮮がアメリカ本土に届くICBMを持ち始めたことによって、そろそろ考えなければ いけなくなった。


能勢:
アメリカ側は北朝鮮がアメリカの首都を攻撃できるICBMを持っているということを前提にものを考えなければいけなくなる。

そうすると仮に北朝鮮がアメリカではなく周辺国に攻撃をしかけましたと、その時、アメリカは北朝鮮に対してICBMで同盟国として報復措置をとれるかというというところが、やっかいな問題になるでしょうか?


小泉悠:
はい、そうですね。ただ北朝鮮が先に手を出している以上はアメリカは道義的にも実質的にも報復はやりやすい。たとえ北朝鮮がICBMをアメリカに向けて発射しても実際はアメリカが撃墜できる範囲にとどまるのだろう、という抑止が効いている状態だと思います。

どちらかというと懸念されるのは北朝鮮の核が同盟国との仲を裂くような事態、政治的な影響の方だと思います。

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↓ 小泉悠氏をゲストに広島への原爆投下から今日(こんにち)までの核の変遷を徹底解説した8月11日(金)配信「週刊安全保障」はこちら↓
https://www.houdoukyoku.jp/archives/0012/chapters/29071

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