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気づけば「似たような意見」ばかり…偏ったネット情報のワクから飛び出す方法

特集「あの人の『情報源』が知りたい」第2回

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Aug 22, 2017 by editors room Reporter

3 Lines Summary

  • ・ネットの情報収集の多くは、実は“似たような情報”の消費に過ぎない
  • ・レコメンドされた情報なのに、知らない知識に出会ったつもりになってしまう
  • ・ランダムなネットサーフィンやリアルな“出会い”にこそ未知の情報がある

ネットに“情報の海”という印象を抱く人も多いだろう。しかしその実、ルーチンで見るSNSやブログ、ニュースアプリに備わったレコメンド機能などで、摂取している情報の多くは、ある種のフィルタリングが掛かった状態にあるといえるかもしれない。だがそれでは、得られる情報に偏りが出てしまうのは当たり前。自分の情報収集の枠組みを破り、新たな情報に触れる方法はないのだろうか。『弱いつながり 検索ワードを探す旅』(幻冬舎)、『ゲンロン0 観光客の哲学』(ゲンロン)の著者で哲学者・作家の東 浩紀さんに聞いてみた。

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「こんなところに辿り着いた」が、ネットの情報収集の醍醐味

そもそも東さんは哲学や人文思想だけでなく、情報社会についての考察をこれまでにいくつも発表している人だ。果たして日々どのように情報収集をしているのだろうか。

「ツイッターかな(笑)。ツイッターを眺めながら、自分が気になる出来事やニュースを読む。あとは毎日5つくらい、ニュースサイトのトップページから直感でランダムに記事をクリックする。そうすると変なニュースを読めたりするので面白いですね。家ではニュース番組を見たりもしますよ。でも、次々と情報が流れてくるストレートニュースが好きなので、キャスターが個性あるコメントをする番組はあまり見ないですね」

素の情報を届けるメディアを好むという。情報をテーマに沿ってまとめて提供してくれるキュレーションメディアは、一見便利なようだが…。

「僕自身はキュレーションメディアをほとんど使いません。情報がカスタマイズされて『あなたの読むべきものはこれとこれです』と次々提示されると、自分のなかの大事なものが失われた気がします。それよりも、たまたまクリックしてしまう経験が大事なんです。“ネットサーフィン”という言葉は最近使われていない気がしますが、どんどんクリックして何が出て来るかわからない先に、『こんなところにまでたどり着いてしまった』という感覚が好きで、それこそがネットの情報収集の醍醐味だと考えます」

無意識的に消費者は“同じもの”を求める。それは情報でも同じ

キュレーションやレコメンド機能で得られた情報が“与えられた”ものであるのに対し、偶然の出会いを求める情報は“探した”ものといえるだろう。

「多くの消費者は、常に同じものを欲していたいわけです。例えばカレー屋にいったら、ずっと同じようなカレーが出てくるのがいいのであって、毎日違うレシピの攻めたカレーが出てくるなんてたまったもんじゃない。アニメにしてもドラマにしても、同じような人が出ている同じような物語を消費者が求めている。情報についても同様で、通勤時間中に短い時間でニュースを消費し、上司や同僚と『あの事件どう思う?』となんとなくしゃべりたいなら、キュレーションメディアで十分かもしれない」

キュレーションメディアやニュースを集めたサービスが増えていることを見れば、ネットでの情報収集のトレンドは予想外の出会いの機会を減らしているといっても過言ではないかもしれない。

「ユーザーの好みに照らし合わせて、同じものだけ集めることができる。たとえば、嫌いな国を嫌うための情報や好きなアニメの情報を無限に集められる。そうすると、それだけで人間のキャパシティなんて埋まってしまうわけです。気づかないかもしれないけど、今の時代の本質は似たものがいっぱいあるってことなんですよ。自分が好きな作品と似たものをずっと享受していても時間が潰れるし、なんとなく生きていける。でも、世界の新しい姿を知りたいとか、自分も刺激を受けたいと思うんだったら、それだけでは不十分ですよ。どちらがいい、ということではありませんが」

“あまり深く考えず”ものに触れる、“観光”にこそ発見がある

似たような情報を集めてしまうのはキュレーションメディアに限らない。『弱いつながり』の冒頭では、検索サイトのカスタマイズ技術、予測検索の進歩について触れ、自分の考えた言葉を入力して「自由に検索しているつもり」でも、検索サイトが「取捨選択した枠組みのなか」でしか考えられないと語っている。では、どうすれば枠組みを越えて情報収集できるのか。そこで東さんは、“観光”というキーワードを提示する。これは、なにも「デジタルを捨ててアナログを見よう」と言っているわけではない。

「僕の言う“観光”というのは、必ずしも現実の旅を意味しているわけではありません。簡単に言えば、好奇心を持って様々なものに接してみようということです。実際に外国に行かなくてもいいし、別になんでもいい。いろんなことに関心を持つ、そして、あまり深く考えずにいろんなものを読んだり触れたりする。そうすると、自分が知っていることや思っていることが違う形で見えたり、意外な情報にも出会える。そういう経験が大事なんです」

偶然の発見にこそ、驚きや気づきがあるということは、誰もが「なんとなくわかる」ところだろう。

「僕の提案は、『同じものばかり享受するのは退屈だから違うものに触れては?』ということですね。でも、違うものに触れるというのは予測不可能なものに触れるということだし、予測通りの快楽を与えてくれるとは限らない。つまりリスクがあるわけです。しかしそのリスクこそが、自分の固まってしまった価値観を崩す可能性があるので、それに積極的に身をさらす必要がある。それを“観光”と呼んでいる、ということですね」

予想外なものに出会う空間を、自ら作ることもできる

東さん自身も、様々な情報に触れる機会を作っている。たとえば著書を出版することや、ゲンロンのイベントスペース「ゲンロンカフェ」の運営も、そんな側面があるのだとか。

「ネットの多くはカスタマイズされた空間なので、そこで情報発信していると自分に関心のある人か自分のアンチしか来ない。そこで別の空間を作ろうと考えました。本屋に本を置けば、誰かが本を手にとるかもしれない。また『ゲンロンカフェ』であれば、イベントの登壇者に惹かれてきた人が、ゲンロンという会社に興味をもつこともある。予想外の出会いを作るためにはチャンネルが多い方がいいでしょ? だから本を作るしカフェもやるということです

“観光”にはさまざまな手段と意外な出会いがある。日々の情報収集に疑問を感じたら、ふらっとどこかに出かけてみたり、偶然入った本屋で棚を眺めたり、ランダムに情報をクリックしてみてはいかがだろうか。そこで触れるものから、驚きの発見や仕事のヒントが見つかるかもしれない。


文=島晃一

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東 浩紀(あずま ひろき)
1971年東京都生まれ。哲学者・作家。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。株式会社ゲンロン代表、同社で批評誌『ゲンロン』を刊行。著書に『存在論的、郵便的』(新潮社、第21回サントリー学芸賞)、『クォンタム・ファミリーズ』(新潮社、第23回三島由紀夫賞)、『弱いつながり』(幻冬舎)など多数。2017年、『ゲンロン0 観光客の哲学』(ゲンロン)を刊行。

株式会社ゲンロン
https://genron.co.jp/

『ゲンロン0 観光客の哲学』
https://genron-tomonokai.com/genron0/

あの人の「情報源」が知りたい
vol.2

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