
3 Lines Summary
- ・「1日3食」がベストなわけではない!?
- ・成功者が会席料理の店を使うのは“シンプル”だから
- ・無意識の習慣がダイエットを失敗させる
“一流”と呼ばれる人は個々に合った食事リズムを確立
“一流”と呼ばれる世の中の成功者達は、体が引き締まっているイメージがある。仕事で国内や海外を飛び回り、さらにトレーニングもしている彼らが、適当な食生活を送っているとは思えない。特別なことをしているのではないだろうか。
そこで、『仕事で圧倒的な成果を残す ハイパフォーマーが実践する 飲食の技術』の著者で、約3000人の栄養指導を行ってきた管理栄養士・ながいかよさんに、世界で活躍するスポーツ選手や外科医など、“一流と呼ばれる人”の食習慣の共通点を聞いた。
「これまで多くの一流と呼ばれる方々の食生活を指導してきましたが、そこから見えたものは『成功する人は必ずこれを食べている』という共通の食事法がないということです。また、仕事で各地を飛び回り、付き合いで深酒することもあるため、正しい食事を摂りにくいということもわかってきました」(ながいさん・以下同)
思いがけない答えだが、彼らは食生活には頓着していないということだろうか。
「ただし、適当というわけではありません。1日の食事の回数や摂るタイミングなど、個々に合った食事法を確立している人が多いように見受けられます」
例えば、毎日手術を行う外科医は、昼食後に眠気を催して手術に支障をきたしてしまうため、あえて昼食を摂らずに1日1食にしているそう。あるスポーツ選手は、ハードなトレーニングでエネルギーを必要とするものの、食が細いため、1日7回に分けてこまめにエネルギーを補給しているんだとか。最大限に能力を発揮するため、最適な食事法を工夫、実践しているというわけだ。

「厚生労働省が出している『食生活指針』でも、『1日3食摂りましょう』という記載はなく、『1日の食事リズムで生活のリズムを整えましょう』と示されています。自分の生活に見合った食事法を見つけるところが、“一流”への近道といえるかもしれませんね」
ダイエットには素材そのものを活かした「シンプル食」を
食事のリズムを意識することはわかったが、食べるものが変わっていなければ、仕事の仕方も体型も変わらなさそうな気がする。料理を選ぶ時に、気をつけることはないのだろうか。
「仕事で成功を収めている方は出張続きで、外食ばかりということも稀ではないので、行く店や食べる料理を意識している方が多いと思います。その基準となるのが『シンプル食』。会食などで会席料理の店を使うことがありますが、素材を活かしたシンプルな調理の食事が多いため、あえて会席料理を選んでいる人もいます」
“シンプル=素材そのものが見える”食事を選ぶ方法は、一般的なビジネスマンでも日々の生活に取り入れやすい。丼物であれば、衣を付けて揚げるカツ丼より、素材を活かした海鮮丼の方が体に負担がかかりづらい。海鮮丼は食べる時にしょうゆをかけるため、味付けを自分で調整できるところもポイントだ。定食なら煮物より焼き物の方がベター。
日々、無理なく実践できるテクニックがダイエット成功の秘訣
「食事は毎日のことなので、無意識の行動が重要です。太る、仕事のパフォーマンスが落ちる原因も、食事の際の無意識にあります」
一息つく時、いつもブラックコーヒーを飲んでいた人が、なんとなく甘みのついた炭酸飲料を飲み、その頻度が増えて、炭酸飲料が日課になっているということがあるという。仕事の疲れを癒すため、帰ってから甘いものを食べることが習慣化してしまうこともあるだろう。

「週に1回食べ過ぎるより、量は少なかったとしてもコンスタントに摂取する方が肥満に結び付きやすいです。習慣化したことは調整しづらいですし、徐々に量が増えていくこともあります。その点、一流と呼ばれる方々は努力を最小限にして、効果は最大限に得る効率重視な人が多いです」
ダイエットのために炭水化物を減らす人が多いが、炭水化物が少ないと満足感を得にくく、お腹も空きやすくなる。そのため、夕方に甘い飲み物やおやつを食べてしまうという矛盾が生じてしまう。成功者は炭水化物を抜くのではなく、食事をしっかり摂っておやつを食べない、甘い飲み物をお茶に変えるという継続しやすい方法を、無意識的に取り入れるのがうまいという。
「飲み物などに含まれる“見えない糖”を摂らないことで、体型維持やパフォーマンス向上につながります。1カ月頑張ってシビアな食事制限をするより、『この程度ならできる』と無理なく実践できることを継続する方が、効果は出ますよ」
まずは日々の食生活を振り返り、どのタイミングで食事を摂っているのか、無用な間食をしていないか、チェックするところから始めよう。
■ながいかよ
えいよう未来研究所代表、管理栄養士。病院勤務、料理講師を経て企業にて栄養指導に従事。2010年に独立し、全国各地で講演を行う。約3000人の栄養指導の経験から、独自のストレスゼロメソッドを開発。著書に『仕事で圧倒的な成果を残す ハイパフォーマーが実践する 飲食の技術』(すばる舎リンケージ)など。
取材・文=有竹 亮介(verb)