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希望の党の公約「大企業の内部留保に課税」はポピュリズムだ
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希望の党の公約「大企業の内部留保に課税」はポピュリズムだ

消費税増税凍結の財源になる?

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Oct 08, 2017 by Hiroki Takashi Commentator

3 Lines Summary

  • ・希望の党が「内部留保課税」案の公約発表
  • ・「内部留保=むだなおカネをプールしている」は誤解
  • ・政府が口を出すのは民間の株主に対する越権行為

批判に乗ったポピュリズム

希望の党は公約で、大企業の内部留保に課税することを検討すると表明した。消費税増税凍結の財源とするらしいが、財務会計やコーポレート・ファイナンスの基本知識を欠いた、浅薄な議論だと言わざるを得ない。

我が国の景気拡大は、「いざなぎ景気」の57カ月を抜いて戦後2番目の長さになっているが一般には景気回復の実感が乏しい。一方、上場企業の業績は2期連続で最高益を更新する見通しだ。

企業の内部留保は400兆円にも及び、企業が稼いだおカネを賃上げや設備投資に積極的に振り向けないことが、「実感なき景気回復」となっているとの批判がある。

希望の党の「内部留保課税」案は、その批判に乗ったポピュリズムだ。内部留保課税についての問題点として真っ先に挙がるのは二重課税という点だが、それだけではなく、より本質的な観点からの問題がある。

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企業は売上高から人件費をはじめ様々な費用を控除し、残った利益から法人税等の税金を払って最終利益を確保する。企業が稼いだ利益は最後に株主のものになるが、株主への配分は1)配当や自社株買いで還元するか、2)内部留保するか、のどちらかしかない。

金融理論によれば、1)でも2)でも株主価値(簡単な言葉で言えば「株主の取り分」)は変わらないのだが、実際のマーケットでは増配などが好まれる傾向がある。この点は別の機会に議論したいが、内部留保とは実は株主価値を高める株主への利益配分のひとつであることが - 世間一般の議論からも - 抜け落ちていることが問題だと思う。

内部留保された利益は、「利益剰余金」として、「株主資本」に組み込まれる。株価とは資本の値段である。帳簿上の「株主資本(=エクィティ)」を市場で時価評価したものが時価総額であり、企業価値である。企業がどれだけ株主資本を増やしていけるかという期待が市場の評価につながる。そして企業が自力で(エクイティファイナンスでなく)資本を増加させるのは - 利益を稼ぎ、稼いだ利益を「利益剰余金」として資本に組み入れる - まさに「内部留保」することにほかならないのである。

内部留保こそ企業価値の成長プロセスの根幹であり、内部留保なくして企業価値は増加しない。企業は稼いだ利益を「利益剰余金」として、「株主資本」に組み込むことでバランスシートが大きくなる。資本の側(貸方)の増加に合わせて、資産(借方)も膨らむ。企業は稼いだ利益を設備投資やM&Aに回して成長のための営業資産を取得するのである。その時、資産のなかで現預金が膨らんだままの企業があるとすれば、責められるべきは - 内部留保そのものではなく - その現預金だろう。理論的にも実際的にもキャッシュは利益を生み出さないからである。

しかし現預金をいくら手元に持つべきかは、業種や個々の企業によって必要な運転資金が異なるのだから、一概に適正な比率を決めることはできない。結局、内部留保に課税せよ、という議論は、「内部留保=むだなおカネをプールしている」という、字面からくる誤解であって、実現することはできないだろう。

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日本は資本主義の皮をかぶった「国家資本主義」?

実際のところ、企業のなかには、稼いだ利益を、配当や自社株買いなどの株主還元にも、設備投資にも回さず、ただひたすらプールしているだけの会社もある。では、そういう企業には課税するべきなのか。「本筋」論を言えば、上場企業である限り、そういう会社は国家による課税というペナルティではなく市場によって淘汰されるべきである。

不要なキャッシュを持ちすぎればROEが低下し、市場で評価されなくなる。見限った株主はその企業の株を手放す。その結果、時価総額が減少し買収の標的になる。結局、企業がいくらキャッシュをもつべきかという問題は市場と株主が判断するべきことなのである。なぜなら、それこそが企業経営のひとつだからである。

その伝で言えば、現金比率に限らず、人件費率にせよ設備投資額にせよ、そうしたことはすべて企業経営マターであり、政府が口を出すのは - 国有企業ならいざ知らず - 民間の株主に対する越権行為であろう。コーポレートがバンス改革の流れにも逆らうものだ。

こういう議論が育つ土壌があるということを見るにつけ、日本は資本主義の皮をかぶった「国家資本主義」であり、それは「社会主義」の皮をかぶった中国がおこなっている政治・経済と大差ないのではないかと思ってしまう。

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衆院選2017

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広木隆
Commentator
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