「嫌われる勇気」がないと、忖度とインスタ映えの不自由な社会が待っている。
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「嫌われる勇気」がないと、忖度とインスタ映えの不自由な社会が待っている。

【年末特別インタビュー】アドラー心理学『嫌われる勇気』の岸見一郎さんに聞く。

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Dec 31, 2017 by Shimizu Toshihiro Reporter

3 Lines Summary

  • ・2017年の新語流行語大賞は「忖度」と「インスタ映え」
  • ・どちらも「他者」を気にする言葉
  • ・自分がしたいことにブレーキをかけてはいけない

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」

そう断言したのは、アルフレッド・アドラー。心理学の三大巨頭のひとりと称され、世界的名著『人を動かす』の著者・D.カーネギーなど自己啓発のメンターたちに多大な影響を与えたとされる。

もし、この世界から対人関係がなくなってしまえば、あらゆる悩みも消え去ってしまうという。

しかし、現代はSNSの発達などで、いつも誰かとつながっている状態になっているとも言える。

アドラーの思想が盛り込まれたベストセラー『嫌われる勇気』の著者・岸見一郎さんなら、現代の状況をどのように考えるか? 2017年の新語・流行語大賞をテーマに話を聞いた。

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岸見一郎さん

「忖度する人は嫌われることを恐れる人」

――2017年の新語・流行語大賞は「忖度」と「インスタ映え」でした。どちらも「他人の目」を気にする言葉です。昨今のアドラー人気とつながる部分があると思いますか?

ありますね。「嫌われる勇気」は流行語大賞にはなりませんでしたが(笑)。

リンクしているかはわかりませんが、「嫌われる勇気」にある考え方に馴染んでいる人が「忖度」という言葉を聞けば、「忖度する人」は『嫌われることを恐れる人』だと考えるでしょう。

――「忖度」が流行語だと聞いて、どう感じましたか?

僕はこの言葉を10年以上前から使っています。人の気持ちをわかることは大事だが、忖度するのも間違いだということを書いてきました。

僕は前は娘に気を遣っていました。娘とはちょっと腫れ物に触るようにつきあっていたところがあって、下手なことを言うと怒るんじゃないかなんて考えていました。

人を傷つけるようなことを言うのはもちろんダメですが、本音というか、自分の考えを率直に伝え合えるような関係がいい関係だと思います。最初はどう受け止められるかを気にしすぎるくらいがちょうどいいですが。

ビジネスでは、下手なことを言って責任を取らないといけなくなる状況に追い込まれることを避けようとする。当たっているとは限らないのですが、相手がこう思っているだろう、こう感じているだろうと勝手に推測する。

でも、本当は言葉でやり取りをしないと相手が何を考え、何を思っているのかわからないはずです。

日本の文化は、忖度という言葉はあまり使われてなかったと思いますが、思いやりや察しの文化であるという説明がされてきました。思いやりや察しがうまく機能しているといいのですが、多くの場合はうまく読めなかったり、当たらなかったりする。

忖度するというのは、今に始まったことでないのは確かですね。

――上司が会社の中で忖度をして、新規プロジェクトの邪魔をするなんてケースも耳にします。そうした忖度が日本を弱くしている面もあるのでしょうか?

対人関係であればある程度譲ってもいいのですが、仕事でそれをやってしまうと妙なことになります。上司が言うことがおかしかったら、それは指摘しなければいけないですね。言わないと何も変わりません。

組織を変えていこうと思った時に、上司が変わるのが早いのですが、若い人から突き上げることも大事だと思います。

――上司を変えるために、できることはありますか?

仲間を増やすのは一つの方法です。一人で戦うのは無理なので。自分の考えを理解、賛成してくれる仲間を増やしていく。そうすれば、居心地が悪くなり上司が態度を変えるかもしれません。

「誰が言っているかではなく、何が言われているかに注目する」という原則を貫く。人を責めてはいけない。その人の考え方について意見を言うという方向で話を持っていくしかないですね。

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――どんな指摘の仕方がいいと思いますか?

上司に反論するならば次のようにいってみたらどうでしょう。「あなたはこういうことを言われました。でも、私は反対です。なぜ反対かというと、これこれこういう理由です」と言うふうに。次に、「他の方はどう思いますか」と他の人に意見を求める。

上司に直接返してしまうと、2人の間での権力争いになってしまいます。考え方そのものを問題にして他の人にふれば、上司も含めて考えそのものについて考えることができます。

自分の意見であることをはっきり表明することも大切です。「これは私の考えなんですが」と。そうしたら感情的に反発されにくい。

自分がしたいことができない

――もうひとつの新語・流行語大賞の「インスタ映え」は、承認欲求を求める権化のような言葉にも思えます。

友達のいない人がインスタにあげる写真を撮るために友達を雇うというビジネスがあるみたいです。いかにも友達がたくさんいるかのような設定を作るわけです。

だから、インスタグラムは、最近かなり変わったと思っています。僕は早い頃からやっていて、風景の写真を中心に載せてきたのですが、他の人の写真を見ると、誰かに撮ってもらったり自撮りしたりする写真が多いですね。

その人がレストランで撮った料理の写真に「いいね」が多くて、何千とか何万とかフォロワーがつく。僕みたいな昔ながらの風景の写真なんかは人気がありません(笑)

だから、本来の目的が変わってきているような気がする。写真が好きな人が自分が撮った写真を載せるというのとは違って、自分の生活を伝えたり、「いいね」をつけてもらう交流の場になっているように見えます。

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――現代人は他者を気にしすぎて不幸な状況だと思いますか?

人の気持ちをわかろうとすることそれ自体が悪いわけではありません。あまりに人目を気にしすぎて言いたいことが言えない、生活の場面ではしたいことができないということが問題です。

他者からどう思われるかを気にしすぎていて、自分がしたいことができなくなってきているように思います。

――「忖度」「インスタ映え」を見ていると、他者にどう見られるかを考えすぎる社会になっていますか?

普通の写真サイトだと、承認されようがされまいが、自分がいいと思った写真を載せればいいだけでした。今は全然違いますね。

それなら僕の意識を変え、他の人のような写真を載せればいいわけですが、本当はそれもおかしいですね。他の人が載せる写真が前とは違ってきたからといって、それに合わせる必要はありません。皆に合わせたほうがいいというのも忖度することですね。

これまで通りであっても、それを支持する人も当然いるわけですから、自分がしたいことに自分でブレーキをかけなくていいでしょう。

嫌われる勇気というのは、「嫌われなさい」という意味ではありません。「嫌われることを恐れるな」という基本的な意味に立ち返って、この考え方がもっともっと広まらないと、非常に不自由な社会になってしまうと思います。

自分の価値が分からない…。そんな現代人の悩みについて解説した岸見一郎さんのインタビューはこちら。

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実は身近な物語【ホウドウキョク図書館】
vol.8

「嫌われる勇気」がないと、忖度とインスタ映えの不自由な社会が待っている。(この記事)

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