
3 Lines Summary
- ・5つの自立ができることで大人として認められる
- ・思春期に自立できるかが分かれ道になる
- ・夫婦円満が子どもの自立にも影響する!?
大人にとって必要な“5つの自立”
成人年齢が18歳に引き下げられることによって、教育プログラムが変わっていく可能性があることは本特集の第一回で紹介したとおり。
18歳と20歳、その間の2年が差し引かれることによって、子どもの成長を見守る親側はどのような心構えが必要になってくるのだろうか。
前回に引き続き、教育評論家の尾木ママこと尾木直樹さんに聞いた。成人式で全国各地が賑わう今日、考えてみたい。

「子どもが成人するまでに親が考えなければいけないのは“5つの自立”です」
開口一番でそう話す尾木ママ。この5つの自立とは、以下を指す。

・精神的自立…他人に頼らず、自分の意思で物事を決定していく力を備えること
・経済的自立…自分の稼いだお金で生活できるようになること
・生活的自立…身の回りのこと自分で行える基盤をつくること
・社会的自立…社会の一員としての自覚を持つこと
・性的自立…性差を理解し、異性を尊重できるようになること
しかし、最近はこの自立がうまくできていない子どもが多いそうだ。
「簡単に言ってしまうと、親離れができていないんです。思春期に入ったにもかかわらず親に反抗できない、何でも相談し合ってしまう、果ては入浴も一緒。いつまでもそういった生活をしていると、大人になっても親がいないと何もできなくなってしまいます」
性的自立ができていない子が増えている
そういった自立すべき時期に親子が密着することを“親子共依存”と呼ぶ。中でも尾木ママが心配しているのが性的自立のできていない子が増えていることだという。
「もちろん幼少期のスキンシップは人間形成のうえで必要なことです。しかし、それが10代後半、さらには20代になっても続くのはいかがなものでしょうか。
子どもが成長とともに自分の性を意識し、異性の親を避けるようになるのは自然のこと。それがきっかけとなって精神的にも徐々に親から自立していきますから。しかし、それが親子共依存になるときちんと機能しなくなってしまうのです」
“思春期は自立期”と呼ぶ人もいるが、そのきっかけとなる性的自立が阻害されることで、大人へのステップを踏むのが難しくなってしまうわけだ。
しかし、これには子どもだけでなく、親にも問題があると尾木ママは説明する。いわゆる過干渉が、それだ。
最近は会社の欠席連絡を親がすることも少なくないというが、そうした行き過ぎた子どもへの愛は、かえって自立の妨げになり、“子どものような大人”を生み出すきっかけになってしまう。

子どもの自立心を育てるために必要なこととは?
では、子どもの自立心を育てるためにはどうしたらいいのだろうか?
「まずは思春期に差し掛かった段階で一定の距離を保つこと。親だからこそ、子どもが心配になる気持ちもわかりますが、そこは信じないとダメ。次に夫婦が仲良くいること。特に子どものいる前で夫婦喧嘩をするのは立派な児童虐待ですし、自立を阻害することにもなります!」
そう強い口調で話す尾木ママ。喧嘩を目の前で見せられると、子どもはそれに強いストレスを感じ、非行や暴力に走ってしまう可能性も増えるという。また、子どもは親をモデルケースにすることが多いため、他人とのコミュニケーションにも影響を及ぼすそうだ。
成人年齢が18歳に引き下げられるということは、2年早く社会的責任を負うということでもある。子どもをきちんと大人として育てるために、今までよりも強く“自立”について考えていく必要がありそうだ。
尾木直樹さん
教育評論家、臨床教育研究所「虹」所長、法政大学特任教授。滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、私立海城高校、東京都公立中学校教師として、22年間子どもを主役とした創造的な教育を展開、その後大学教員に転身して22年、合計44年間教壇に立つ。情報・バラエティ・教養番組にも出演しており、「尾木ママ」の愛称で親しまれている。
文=村上広大(EditReal)
障害、いじめ、不登校。15歳の画家が描いた「あるべき大人の世界」
20歳になって、まず何をした?新成人たちのホンネ
“二度目の成人式”を千葉で開催。40歳になって感じるハタチとの違いとは?
【新成人】女子大生社長・椎木里佳が語る20歳のリアル「40歳でも子ども」
夫婦喧嘩は児童虐待と同じ。尾木ママに聞く「親が考えるべき5つのこと」(この記事)
→ 一覧へ