セリフは邪魔?「手塚治虫マンガ」が意外な演出で蘇った
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セリフは邪魔?「手塚治虫マンガ」が意外な演出で蘇った

新美有加アナが舞台「W3(ワンダースリー)」を鑑賞

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Jan 21, 2018 by SWEET DEN OF PREMIERE Reporter

3 Lines Summary

  • ・手塚治虫の初期の代表作「W3」を舞台化
  • ・自分が大人になってしまったと痛感
  • ・必要以上の情報を与えられていることに気付く

「争いばかり起きる地球という星は、銀河系に不必要なのではないか」

銀河系の様々な星の住人からなる「銀河連盟」による問題提起から舞台は始まる。原作は手塚治虫の「W3(ワンダースリー)」。

いま、地球に住まう者として少しドキリとする。

個性あふれる3人の宇宙人と、正義感に満ちた地球人で漫画家の真一が出会い、地球の存亡をかけて悪と戦うSF作品だ。

テレビアニメ化もされ、当時の少年たちを熱狂させた人気作品は、手塚治虫生誕90周年となる2018年に年齢や国籍を問わずに楽しめる舞台として蘇った。

ダンスやマジックなどのパフォーマンスに加え、“マンガっぽさ”を表現するためプロジェクションマッピングを使うなど最先端のエンターテインメント「MANGA Performance W3」が上映されている。

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自分も大人になってしまった

手塚先生の「W3」をノンバーバル、つまりセリフなしで表現するというのが特徴のひとつという今回の舞台。

それで内容を理解できるのか私は少し身構えましたが、冒頭から最低限のセリフや文字を用いて話が展開していくことがわかり、少し安心。

といえど、世界観を少しつかむまで多少の時間は要しました。銀河連盟の面々は影絵で表現されるのですが、それが何に見えるか…というところで、自分の想像力が凝り固まっていることを痛感することに。

公園の砂が雪に見え、新聞紙が魔法のじゅうたんになって遊んでいたような、発想力が豊かだった幼い頃を思い出して、ああいつの間にか自分も大人になってしまっていたのだと切なくなるのです。

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動物に扮して地球を調査しにきた宇宙人3人組「W3」は、真一のアパートで冷徹なA国のスパイと遭遇し、人類の存亡を揺るがす大事件に巻き込まれてしまいます。

そんな「W3」たちの動きはパペットで表現されているのですが、真一を演じる西島数博さんが「飼っているワンちゃんに話しかけるような感覚に近い」とインタビューで語っていたように、言葉がなくても、目を見れば何かを感じ、声が聞こえてくる感じがしました。

観終わる頃には、パペットであることを忘れていて、子供の頃に持っていた想像力を取り戻せたような気分に。この舞台を通して、普段、いかに多くの情報を誰かに与えてもらって暮らしているのかと、ハタと気づかされました。人間は本来、考える葦であるべきなのに。

ノンバーバルは、私もそうだったように、たしかに手を出しにくいジャンルかもしれません。

最近の自分の傾向として、物語の落としどころがすぐにわかるヒントに満ちた単純明快なエンターテインメントをつい選びがちでした。それも確かに面白いんです。ですが、ノンバーバルには違った魅力があります。

明確な言葉が用意されていない分、自分でその場面やストーリー展開、登場人物の想いを汲んでいく必要があります。その余白を自分で埋めていくような楽しみ方がある。そして、セリフがない分、演者のちょっとした動きや空気感など他のことに集中できる。そんなことに気づかされる70分でした。

地球人として反省

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(左から)西島数博さん、ウォーリー木下さん、新美有加アナ

上演後、構成・演出を手掛けるウォーリー木下さんと西島さんにインタビューをしました。その中で、ウォーリーさんは「舞台上で起きている空気が浮き彫りになるのがノンバーバルのよさ」と語っていました。

「普通にセリフを言うときは、お客さんが言葉の意味を解釈するのに意識の60~70%を使ってしまうが、セリフがないと、目が合って『あっ!』と驚いた様子が強調されるなど、動く空気や間が浮き彫りになってくる」というのです。

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演出面では、プロジェクションマッピングを効果的にする立ち位置や振り付けの見事さには驚かされます。相当な稽古を積んだであろうタイミングのあった仕掛けの数々に心が躍ります。

特に物語ラストの戦闘シーンでは、影と物と人間がお互いに影響し合って一つのシーンを作り上げていきます。自分で気づいたもの以外に、インタビューで教えていただいた仕掛けもあり、もう一度観たくなる欲をかきたてるほど細かな演出が加えられているのです。

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雨音や物音一つ一つのオノマトペが文字となって現れる工夫や、漫画のコマのような壁、映像とリアルがシンクロする仕掛けなどで、漫画の世界に入ったような不思議な気持ちにさせられます。

私が手塚治虫世代ではないからかもしれませんが、作品の世界観がかえって新しく感じます。とても自分が生まれる前に作られた話とは思えませんし、地球の状況は相変わらずで、地球人として反省するほどです。

「本番が一番気持ちいい」

最後に「W3」が、地球を滅ぼすか否かという決断をします。それをしっかり見届けていただきたい作品です。

漫画が動くようになり、実写になり、漫画とリアルが共存するこんな作品に生まれ変わったなんて、もし今も手塚先生がご存命ならば何を思い、どんなことを考えるのか。そんなことに思いをはせる夜になりました。

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西島数博さん

「ダンス公演ではない」と思いながら取り組んでいると語ってくれた西島さん。この舞台を演じる難しさについて、このように教えてくださいました。

「お芝居のなかで、感情が動いて、それに対応してお芝居をするけれど、言葉を出さないことが難しい。言いたくなる、やっぱり」

呼吸で会話していく感じを観客と組み立てていくのが面白いと話し、観客のリアクションが演じる側のエネルギーになって演じやすくなるそうで、「本番が一番気持ちいい」と嬉しそうに語っていました。

観客がステージにあがる場面もあり、演者と観客で作り上げていくような空気感がこの作品にはあります。観る人によって、何を感じ、何に思いを馳せるのか…。その姿が変わるのかもしれません。

誰かと感想を共有したくなる作品を観た後は、自分の中の新しい自分に出会える気がします。


取材・文=新美有加
構成=ホウドウキョク編集部

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