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米大統領選を経て、これから世界が直面する現実

トランプ当選を選挙戦序盤から確信していたジャーナリスト・木村太郎とともに、これから激変するであろう世界の安全保障環境、経済、そしてそれらがもたらす日本への影響を徹底分析します

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Nov 13, 2016 by Morishita Tomoya Reporter

3 Lines Summary

  • ・なぜ世界のメディアは選挙結果を見誤ったのか
  • ・トランプとプーチンは意外に馬が合う?冷戦終結に匹敵する変化も
  • ・在日米軍撤退!どうする日本

メディアがトランプ当選をよめなかったワケ

森下 アメリカメディアであれ、日本メディアであれ、多くのメディアがヒラリー優勢と伝えていました。しかし、太郎さんはひとり、ずっとトランプと主張していました。なぜメディアは見誤ったと考えますか。

木村 今回はアメリカのメディアがすごく問われた選挙になった。なぜかというと、アメリカのメディアの9割9分が民主党支持で、共和党に敵愾心をもっていた。しかもその共和党にとんでもない候補者が出てきたということで、よってたかってトランプを叩いたわけです。それが結局、読みを誤らせた。

一生懸命、アメリカメディアは反省しようとしているんだけど、僕は反省していないと思う。有権者たちを信じたくなくて、それを考慮にいれなかったというんだけど、確かにそうだと思う。新聞だけじゃなく、テレビ局も、FOXニュース以外は毎日、毎日、トランプの悪口を言い続けてた。それで正しい予測ができるわけがない。だから、メディアが間違っていたのではなく、「メディアの態度」が間違っていたんだと思う。

森下 私はメディア自身に、反トランプ、ヒラリーに対する期待感があったから判断を間違ったと思っていたのですが。

木村 もちろんそうなんだけど、ウィキリークスが発表したメールによるとCNNのキャスターのウルフ・ブリッツァーが、トランプにインタビューする前に民主党本部とトランプに何を聞こうかとやりとりをしていたことがわかった。民主党本部がウルフ・ブリッツァーになにを聞かせようか、とばーっと募集したわけ。そうなってくると、ウルフはCNNのためにインタビューをやっていただけではなくて民主党本部のためにやってたんじゃないかと疑念が。
そういうケースがどんどん明らかになってきている。そんなマスコミがちゃんとした読みができるわけないと僕は思ってた。

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森下 ということは、アメリカ国民は、反トランプ・親ヒラリーという報道姿勢にも嫌気をがさしていたと。メディアを既得権益とみなしたと。

木村 そう。既得権益のグループは「ワシントンの政治家」「ウォールストリートのビジネスマン」そして「彼らとグルになっているマスコミ」。それが今回の一番の敵になったわけ。だからその「敵」のマスコミがトランプがだめだ、だめだ、と言えば言うほどトランプの支持率はいろんなところからあがっていったと見ています。 

森下 こうしたケースはアメリカ大統領選ではなかなか、なかったことではないでしょうか

木村 1980年以来ずっと大統領選を見ているけれど、いろいろな汚い手を使ったことはあった。たとえば候補者が広告の中でネガティブキャンペーンしたり。だけど、マスコミがこれだけ汚い手を使って、一方の候補者を非難した例はないんじゃないか。
たとえば、NYタイムズは世界で最も権威のあるメディアだと思われていたんだけど、それが一面で、「30年前にトランプが飛行機に乗った時に隣に座っていた女性のスカートに手を入れた」という話を伝える。一面で、だよ。30年前の話を。
しかし翌日には同じ飛行機に乗っていたというイギリス人が名乗り出てきて、「いや、言い寄っていたのは女性のほうだよ」と言う。つまり、裏もとらないでそういう話をどんどん出していた。これは異常だと思ったな。

森下 そういう話が出れば出るほど、太郎さんはトランプがいく、と確信していったのでしょうか

木村 逆にいうと、そういう意味でトランプ支持者に近い、もしくはこれから支持者になるような人間を、どんどんトランプにひきつけていったと思うな。

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トランプはリップサービスで言ってない!

森下 トランプは日米安保に踏み込んだ発言をし、さらに在日米軍の負担金をもっと払えとも言っている。日本への一番大きな影響はなんだと思いますか。

木村 そういう議論を新聞、テレビでもずっとやっているが、それを考える前にトランプが世界をどうしようとしているのか、アメリカをどうしようとしているのか、だから世界はどうなっていくのかを考えないとわからない話。

この問題で最後にアメリカに取材に行ったときに、トランプに近いアドバイザーが「アメリカは第二次大戦で勝った時に、まわりを見たら勝った国も負けた国もみんな焼野原になっていた。そこにソ連が攻め込みそうになって来て、アメリカはそこに軍隊とお金を入れて、西側の国を守って豊かにしていった。しかしその役割はお金が無くなってできなくなった。だからもうその役割は放棄するよ、というのがトランプの一番のメッセージなんだ」と話していたんです。

日本に防衛負担金を払いなさいと言っているけど、それはお金の話ではなくて、アメリカにはそういうことをやっていく力と余裕がないんですよ、と言っているわけで、あといくら出せばいいんですか、という話ではない。
だから、いずれアメリカは日本の防衛から退いていく、ということを予想しておいたほうがいいと思う。 

森下 そうしたトランプの考えにアメリカ議会は追随していくのでしょうか。

木村 アメリカの議会というよりもアメリカ国民の考え方がまさにそれなんだと思う。
お金の問題だけではなくて、若者の間では、見たことも聞いたこともない国のために血を流すというのはもうやめようじゃないか、という気持ちが相当広がっているんです。

森下 ということはトランプのリップサービスのようにみえた過激な発言も、大部分において実行していくと思って、構えていたほうがいいということでしょうか。

木村 あれはリップサービスというけれど、かなりアメリカ人の琴線に触れる発言だと思う。だから、それは当選したからといって変わるものではないと思うよ。

中国はヒラリー大統領のほうがよかった

森下 中国との付き合いはどうなっていくと見ていますか。

木村 中国に対しては相当厳しいことを言っているよね。だから中国もヒラリーのほうがよかったな、と思っているだろうけど、貿易面でも相当厳しいことを要求していくと思う。ただ、安全保障のうえでは、もうどちらかというと、勝手にやりなさいということになるかもしれないな。

森下 日米安保が弱体化するかもしれない中で中国はほくそ笑んでいる部分もあるんでしょうか。

木村 ほくそ笑んでいるかどうかはわからないけれど、貿易問題では相当手厳しくやられるかもしれないね。中国からの関税を45%にするとか言っているから、本当にそうするかは別にして対決姿勢は強めるんじゃないかと。
逆に、ヒラリーになっていたら中国は大喜びしていたと思う。だからこそ僕はヒラリーにならなくてよかったと思っているんだけど。
習近平にちかい中国の億万長者が去年か一昨年に200億円、クリントン財団に寄付しているんだよね。その話がウィキリークスからでてきていて、いろんな意味で中国とクリントン財団との距離が縮まっていたわけで、これは怖いなと思っていた。
そういう関係が少なくともトランプにはない。

米ロ接近で予想もつかない展開が!?

森下 ロシアに対してはどうでしょうか。ロシアと近しいような発言もあった。オフィシャル上はもちろんそう言わざるを得ないが、プーチン大統領はトランプ大統領を歓迎する発言を発しています。

木村 彼らは会ったことも話したこともない。しかし、トランプはプーチンのやり方を見ていて、「ああいう力強いやり方はいいんじゃないの、決断力があって」と言っている。だから二人は馬が合いそうな感じだよね。

森下 プーチンとトランプが馬が合ってしまったら、EUとはどうしていくんでしょうか。世界に波及していく影響は決して歓迎できるようなものではない気もするんですが。

木村 同じようなケースを考えると、かつてソ連を悪の帝国とよんだレーガンがゴルバチョフとすごく仲良くなって冷戦を終結させた。それを考えると、プーチンとトランプとの関係は予想もつかない展開を持ってくるんじゃないかと思っているんだけど。

森下 EUは結構焦っているんですかね。

木村 EUはロシアの脅威の前で「アメリカなんとかしてよ」といっているんだけど、それには手を貸さないと思うな。逆に言うと、日本がいま中国の前でどうしていいかわからくてウロウロしているけれど、それにも手をかさないだろう。
だからそこでなんとかEUも日本も自分たちで、なにができるのか考えなくてはいけない時代なんだよね。

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バカげた建前はやめてしまえ!

森下 一方、アメリカ国内に目を向けると、所得税、法人税の大幅減税やインフラ整備などを訴えていますが、こうした政策がアメリカ国内におよぼす影響という意味では、ふたを開けてみると株価が一気に上がるなど、歓迎に傾いているようにも見えます。果たして実現できるのでしょうか。どういう影響があると思いますか。

木村 ひとつ原則的なことで変わることがあると思う。それはポリティカルコレクトネス=政治的正当性。
どういうことかというと、むかしアメリカ人は黒人のことをブラックと呼んでいたんだけど、これは差別用語だからやめて、アフリカンアメリカンと言い換えた。こういうのが本来のポリティカルコレクトネスだったんだけど、こういう道義的建前論がアメリカ中にはびこってしまったわけ。

トランプは去年暮れの演説の中で、「私を大統領にしてくれたらアメリカのデパートにメリークリスマスという看板が戻るよ」と言った。
これはどういうことかというと宗教の自由ということは、政府や州が一つの宗教を支持してはいけないということ。たとえ公共の老人ホームでお年寄りがクリスマスを祝おうとしてもクリスマスツリーを飾ることができない。デパートもメリークリスマスなんていうとボイコットされてしまうから言わなくなった。
だから、いまアメリカ人からもらうクリスマスカードには「Season’s greetings」と書いてある。

だけどもう一回、そんなバカげた建前はやめて、メリークリスマスと言おうよ、と。すべてにおいてこういうことをトランプの手でやっていくと思う。

オバマ政権の下で、アメリカの政治だけではなくて社会が猛烈に左翼リベラルに振れてしまった。それを引き戻すということが彼の根底にある考え方だから、これから少数民族などに対する過剰な保護などはなくなっていくと思う。

森下 それは結果的にアメリカにとっていいことなのでしょうか。

木村 アメリカ人はそれを選択したということ。いいか悪いかわからないけど。

オバマは世界を混乱させただけだった

森下 日本の民主党政権を思い出してしまいます。バラ色のことを言って、アメリカ軍にも注文をつけて、しかし結局のところ国民から総スカンで退陣した。同じような道をたどってしまうのではないかと思うのですが。

木村 それがオバマ政権だったんだよ。逆にいうと。オバマ政権は、でてきたときは美しいことを本当にいっぱい言って、しかしやった仕事はオバマケアと呼ばれる健康保険制度をつくっただけだった。
けれど、その健康保険制度でさえ破たんして、州によって二倍に跳ね上がる。もうみんな悲鳴を上げている。トランプ大統領になったら一番最初にオバマケアを否決してやめてしまうことになると思うな。
そして、結局、オバマさんはなんにもやらないで喋っていただけ、ということになると思う。

森下 太郎さんのなかでオバマの8年の評価は低いんですね。

木村 ものすごく低い。国内はともかく、国外を見てみたとき、この前、アメリカ人に「おたくの大統領はこの8年でなにしたと思う?俺の住んでいる東アジアでは中国がどんどん領海を広げているわ、北朝鮮はボンボンミサイル撃つわ、核実験するわ、ロシアは出てくるわ、フィリピンの大統領はアメリカなんてどうでもいい、と言っているわ、もうアメリカなんてむちゃくちゃ。混乱しているよと。中東を見たってなんにも決まっていない。大混乱でその難民がヨーロッパにいってどうにもならなくなっている。もう世界中がむちゃくちゃじゃないか」と聞いたほど。
オバマは外交的に地球を相当混乱させていると思う。

森下 太郎さんは、トランプが勝つと思うが、好きだということではないとずっと仰っていましたが、トランプに期待できるところもあるんでしょうか。

木村 そうじゃなくて、変化には期待する。よくなるかどうかわからないけど、変えてみないといまのアメリカはもうとてもじゃないけどダメだと思う。

在日米軍はいなくなる!

森下 それによって日本が蒙る影響があったとしても、日本は日本できちんと覚悟したうえで対峙していかなくてはならないと。

木村 それはそうでしょ。日本はアメリカの属国ではないんだから。だからアメリカが変わったらそれなりに日本も日本として変わらないといけない。

森下 では、ずばり在日米軍はどうなると思いますか。

木村 長い目でみるといなくなると思う。

森下 長い目というのはどのくらいのスパンですか。

木村 トランプ政権の間に。

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森下 話が変わりますが、米ロが接近することでアメリカのプレシャーがなくなり、北方領土問題も進展するんじゃないかと期待する声もあります。

木村 違う違う。それは逆の話で、日米が離れていくから、そのとき日本の安全保障はどうするんですかと考えるときに、目の前に中国という虎がいる。
中国の言葉で「遠交近攻」という言葉があるんだけど「遠くと交わり近きを攻める」という意味でこれは鉄則。近くの中国とはどうしても敵対関係になっていく。なるべく仲良くしていかないとはいけないんだけど、そのためには遠くの国と結んで近くを攻めるというのは中国のもともとの戦略なの。

それでいうと安倍総理が12月15日に山口でプーチン大統領と会うという日程を組んだとき僕はひっくり返るくらいびっくりしたんだよね。大統領選が終わったあとの時期を選んだということだよね。

それには2つ理由がある。ひとつは誰がアメリカ大統領になろうと、日本がロシアとなにをしようとなにも言われない政治の空白期間。だからレームダックになったオバマ大統領はいまさら日本になにも言えないし、新しい大統領もなんだかよくわからないうちに日本とロシアが仲良くなるということができる時期なんだよ。

もうひとつは、もしトランプが大統領になった時に、日本は安全保障を基本的に考え直さないといけない。だったら、ロシアに保険をかけるのも一つ手だろう、ということを考えたのではないかと僕は思う。

森下 ロシアとの関係において安倍政権の真剣具合がみてとれると。

木村 相当考えているんじゃないかなと。今度の日ロ会談は”島”ではなくて、世界的な安全保障の枠組みの中で日本が新しいステップをとろうとしている一段階じゃないかと思う。

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【特集「“トランプ大統領”就任までのカウントダウン」】

第1回  不支持率51%“好き”と“嫌い”が真っ二つのトランプ就任式どうなる?

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第4回  米大統領選を経て、これから世界が直面する現実(この記事)

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