卵子凍結は万能じゃない。「高齢出産できる」の思い込みは危険
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卵子凍結は万能じゃない。「高齢出産できる」の思い込みは危険

専門医が解説。ドラマ『隣の家族は青く見える』から見える「妊活の課題」#10(最終回)

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Mar 22, 2018 by ShimizuMayumi Commentator

3 Lines Summary

  • ・不妊治療の不安な気持ちは抑え込まないで
  • ・「凍結卵子」は100年でも保存可能
  • ・女性の過度な安心は危険

難しい不妊治療の止め時

ドラマ『隣の家族は青く見える』で、体外受精による妊娠、そして早期の流産を経た奈々(深田恭子)と大器(松山ケンイチ)は、子供を持たない夫婦2人での生活を選択したようです。

不妊治療の技術は進歩を続けていますが、それでも出産に至らないカップルがいるのも事実です。

不妊治療の「止め時」については、多くのカップルが悩まれます。

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年齢を重ねるごとに確率は下がるとわかっていても、「次は産めるかもしれない」と期待してしまう…。

治療の終わりが見えないため不安が募り、街で子供を目にすることさえ辛くなるケースもあります。

そんな時は感情を抑え込まず、思い切り泣くこともモヤモヤした心の浄化につながります。クリニックのカウンセラーさんに相談してみるのもいいでしょう。

若い卵子を凍結して老化ストップ!

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卵子は30代半ばを過ぎたころから急速に老化します。

そのため、妊娠率が下がり、流産や染色体異常などが起こりやすくなります。一方、胎児がその中で育つ子宮は、卵子ほど老化が顕著ではありません。

そうであるなら、若い時の卵子を保存しておけないか…そこで近年、注目を集めているのが「卵子凍結」です。

「卵子凍結」は、採取した卵子をマイナス196度の液体窒素タンクで保存します。生物の細胞活動はマイナス190℃で止まるため、理論上は100年でも状態を変化させないままで保存可能です。

凍結保存した卵子は、融解後にパートナーの精子を用いて顕微授精を行い、女性本人にその受精卵を移植して妊娠を目指すことになります。

独身女性が将来のために

もともと「卵子凍結」は、がんの治療で妊娠が不可能になる恐れがある女性など、「医学的適応」が一般的でした。

しかし近年では、パートナーの不在や仕事の都合など、社会的な要因で今すぐに妊娠・出産出来ない独身女性が、将来の妊娠に備えるために行う「社会的適応」が増えてきています。

「卵子凍結」による出産は、2016年に大阪府内の44歳の女性が、独身時代に凍結保存した自分の卵子を使って出産したのが初めての例でした。

そして、これまでに10人以上の女性が自分の「凍結卵子」を使って妊娠・出産したというデータがあります。

「卵子凍結」にかかる費用ですが、健康保険は適用されず、全額自己負担になります。クリニックによって違いはありますが、初診から卵子を採卵・凍結までの費用が50~80万円程度。

さらに、「凍結卵子」の保管費が1個につき年間1~2万円程度かかります。5個あれば年間5~10万円、10個なら年間10~20万円程度になります。

アメリカでは、FacebookやAppleなどが、卵子凍結の費用を援助する福利厚生策を導入しています。

日本でも、2015年から千葉県浦安市が20~34歳までの市民を対象に卵子凍結にかかる費用を助成し議論を呼びましたが、もともと3年間の予定であり、助成はこの3月末で終了します。

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「卵子凍結」のリスクとは?

日本生殖医学会は2013年に、「卵子の採取は40歳未満まで」「凍結卵子を使った体外受精などは45歳未満まで」等の「卵子凍結」についてのガイドラインを策定しました。

健康な女性が将来の妊娠に備える「卵子凍結」の是非は、妊娠率や健康へのリスクなどの点で、今でも様々な見解があります。

日本産科婦人科学会は、社会的適応に対しては「妊娠や出産は適切な年齢で行われることが望ましく、その代替方法として卵子凍結を用いるべきではない」としています。

しかし、「卵子凍結」の一番の問題は、「卵子凍結」したことで『高齢になっても出産出来る保険をかけた』と女性が過度に安心してしまうことだという指摘があります。その結果、肝心の結婚・出産が後回しになってしまいがちなのです。

卵子の時間は止められても、女性のからだの時間は止まりません。高齢出産のリスクがあるため、いつまでも妊娠を先延ばしすることは出来ません。

「凍結卵子」は顕微授精を行う必要がありますが、精子提供者は、婚姻関係(内縁を含む)であることが前提で、もちろんその方の同意が必要です。

つまり、「卵子凍結」をしても、妊娠・出産の適切な期間内に、パートナーにめぐまれるかどうかが重要なのです。

また、当然ながら、凍結する卵子が若くなければ、本来の意味がありません。

ところが、実際に卵子凍結を行うのは、40歳を目前にしたパートナーのいない独身女性が多いとする声もあります。

そういう女性は、「凍結卵子」を使うこともなく、保存したままになってしまうケースが多いのです。(日本生殖医学会のガイドラインでは妊娠可能年齢を過ぎた場合、本人に通知の上で凍結卵子を破棄できることになっています)

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不妊治療も少子化対策のひとつ

不妊治療にクリニックを訪れる女性でも、「25歳から35歳が、妊娠・出産の適齢期」「卵子は老化する」…といったことを知らないことが少なくありません。

学校の授業でも、避妊のことは習っても、家族を持つことや妊娠・出産適齢期についてはほとんど学んできませんでした。

妊娠についての正しい知識がなかったためにタイミングを逸し、「もっと早く出産を考えておけば…」と嘆く患者さんは後を絶ちません。

子どもを望むなら、出産する時期を含めたライフプランを立てることがとても大切です。

そして、今回ご紹介した「社会的適応による卵子凍結」などを考えなくても、女性が『出産適齢期に出産でき』、夫婦が『仕事と育児を無理なく両立できる』、そのような社会を皆で作っていくべきだと思います。

そうすれば、不妊に悩むカップルも減り、少子化の問題も改善するでしょう。

この答えはなかなか、見つからないかもしれませんが、行政が不妊治療への助成を拡充するなど、良いきざしも見られます。

今回のドラマや連載記事を通して、周囲の人々や会社など、社会全体で不妊治療への理解・協力が深まり、少しでも治療中の方の苦しさが軽減することを願っています。

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はるねクリニック銀座 院長
清水真弓

ドラマで描かれる妊活の課題
vol.10

卵子凍結は万能じゃない。「高齢出産できる」の思い込みは危険(この記事)

3.0

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清水真弓
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