「大切なのはビジネス的視点」 勝間和代さんに聞く、日本のセクハラ問題の本質
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「大切なのはビジネス的視点」 勝間和代さんに聞く、日本のセクハラ問題の本質

特集「セクハラvs.非セクハラ、そのボーダー」第5回

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Nov 18, 2016 by editors room Reporter

3 Lines Summary

  • ・セクハラは企業の効率化の点からも予防すべきもの
  • ・求められるのは職場男女比の適正化
  • ・日本人男性は「男性主体」な考え方や言動に陥っている可能性がある

現状では明確な法的規定もされておらず、企業内でも個人間の問題として処理されてしまうケースが多いセクハラ。
「疑似恋愛型」なる分類が登場しているように、恋愛の歪んだ形として捉えている男性も多いのではないだろうか。
しかし、経済評論家・評論家の勝間和代さんによれば、職場におけるセクハラ問題を「業務の妨げ」という視点でみることで、よりシンプルな「解決策」がみえてくるという。
勝間さんが考える、日本のセクハラ問題の本質とは?

セクハラは人権問題の一種

企業の効率化という点でも「予防」すべき

ビジネスの視点からみた場合、日本企業の「セクハラ」対策でもっとも問題視すべきなのは、セクハラを“業務の妨げになる一因”として捉えていないことだと私は考えます。
逆に言えば、セクハラ対策をしっかりと行うことが、業績アップにつながるんです。

欧米では多くの企業が、具体的な事例を羅列した明確なマニュアルを用意し、社員に対して徹底したセクハラ対策の研修を行っています。
ここで注目すべきなのが、対策の主眼がセクハラの「予防」に置かれていることでしょう。
たとえば、どんなシチュエーションでも、男女1名ずつのペアになることをルールとして禁止しているんです。
出張はもってのほか、フロアで残業する場合でも男女のペアになることは避けなければいけません。
要するに、セクハラが起こるファクターを事前に排除している、と。
言いかえれば、しかるべき条件下ではセクハラは起こってしまうもの、として考えているわけですね。

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一方で、セクハラが起きた場合のホットラインが完備されているのも、日本企業との大きな違い。
どんな小さなことでも、というよりも小さいことだからこそ、上司やしかるべき窓口に報告すべきという姿勢を徹底することで、問題を深刻化させないだけでなく、互いにドライな対応ができるようになっています。
このようにシステム化されているからこそ、たとえば、もちろん業務内容次第ですが「そのスカートは短すぎるので、セクハラを招く可能性があるから改めるように」といった注意も業務の一環として行えるわけです。

念のため言っておくと、欧米における「セクハラ」とは当然ながら男性から女性に対して行われるハラスメントのみの問題とは限定されていません。
女性から男性に対するセクハラはもちろん、同性間でのセクハラも想定の範囲内となっています。
さらにいえば、LGBTのような性的マイノリティや人種間でのトラブルと同レベルな、人権問題の一種として捉えられているのにも注目しておきたいところ。
この点でも、日本企業の認識は遅れていると言わざるを得ないでしょう。

「男性主体」の社会構造が問題の根源

求められるのは職場男女比の適正化

冒頭でも言いましたが、こうした欧米企業のセクハラ対策は、あくまでもそこで働くすべての人間が最大限のパフォーマンスを発揮できるようにするために行われているもの。
地理的、歴史的に多様な人種が集まる環境ゆえ、自然と対策も整備されてきたという事情があります。

対して日本は、グローバル化が進んできたとはいえ、まだまだ「働く人間」に対する考え方が画一的です。
いまだに「長時間の労働に耐えられる体力を持つ健康な男性」がビジネスパーソンの基準となっており、女性もその基準にあわせるのが当然という風潮がまかり通っていますよね。

セクハラ問題というと、今回の特集の他の記事のように「どこまでの言動がセクハラにあたるのか」といった議論が中心となりがちですが、それも実際には「男性主体」の発想でしかありません。

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こうした状況を改善するための、もっともシンプルで抜本的な施策は、やはり職場の男女比を適正なものにすることでしょう。
これは単にセクハラ対策や男女平等の視点だけではなく、職場のパフォーマンス向上にとっても重要。
ある研究によれば、企業に限らず組織がもっともパフォーマンスを発揮する男女比は、最低限で3対7以上が理想なんだとか。
それ以下の比率になると、男女どちらが多い場合でも、企業や組織の目的を問わず歪みが生じパフォーマンスが低下するというのは、皆さんも経験として実感できるのではないでしょうか。

スウェーデンでは上場企業の取締役の4割以上を女性にすべしという法律があり、一定の成果を上げています。
スウェーデンの事例をみて、EUでも同様の法整備を進める動きが出ているようです。
女性の上司が増えれば、自然と女性が雇用される機会も増え、企業内の男女比が整うというわけですね。
このように、行政が担うべき点もあるでしょうが、ダイバーシティ(人材の多様化)が業績アップにつながるということ理解していれば、社内のルール整備やホットラインの完備を含め、企業内で努力や改善すべき点のほうが多いはずです。

セクハラと向かい合うことは
グローバル社会を生き抜くためにも重要

一方、個人の認識改善という点では、ひとつとても興味深い話があって。
日本人は、欧米人に比べて生物学的に男性ホルモンの「テストステロン」の影響を受けやすいというんです。
また、ある研究によればテストステロンの影響を受けやすい男性が住む国ほど、女性差別の傾向が強いとも。
つまり、日本の男性には酷な話になってしまうのですが、この研究に従えば、日本人男性は生まれつき女性差別やセクハラをしがちな傾向が強いというんですね。

その真偽はともかく、ここで皆さんに知ってほしいのは、自分が意識しているかどうかにかかわらず、日本人男性は地理的、歴史的、生物学的事情によって、無意識のうちに「男性主体」な考え方や言動に陥っている可能性がある、ということ。
また、女性もそうした日本の事情に適応するため、「男性主体」の考え方にあわせている、ということです。

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特に男性の場合、これからのビジネスパーソンとして求められるのは、自分自身の言動を客観的に把握できる「メタ認知」の能力でしょう。
女性に限らず、性的マイノリティや他の人種など、様々な“他者”の立場にたって考えることができなければ、これからの時代を生き抜くことはできませんから。

日本は欧米に比べ、まだまだ「男性主体」の社会ではありますが、この状態が永遠に続くとは考えられません。
事実、私が起業し男女共同参画のお手伝いをするようになってからの約10年間をとっても、緩やかではありますが確実に改善はされています。
企業における女性の登用に関しても、以前は「男性に優る特別な能力を持った女性」のみが選ばれていたのに対し、最近では「男性と同等の能力を持つ女性」が選ばれる機会も増えましたよね。

この状況を、男性の能力が低下したように誤解する人も多いようですが、実際には単に職場環境が正常化の方向に進んでいるだけ。
私の感覚では、あと30年もすれば日本のダイバーシティも欧米の水準に追いつき、今いわれているような「セクハラ問題」も、過去のものとなるのではないでしょうか。

■勝間和代(かつまかずよ)
1968年東京生まれ。経済評論家、中央大学ビジネススクール客員教授。早稲田大学ファイナンスMBA、慶応大学商学部卒業。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得、大学在学中から監査法人に勤務。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。ウォール・ストリート・ジャーナル「世界の最も注目すべき女性50人」選出。現在、株式会社監査と分析取締役、内閣府男女共同参画会議議員、国土交通省社会資本整備審議会委員、中央大学ビジネススクール客員教授として活躍中。最近では、ボードゲームカフェ「THE WIN WIN」のプロデュースも行っている。
http://www.katsumaweb.com/

取材・構成=石井敏郎
撮影=大平晋也

セクハラvs.非セクハラ のボーダー
vol.5

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