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妻との関係、父親の威厳… 子育てに、父親の出る幕はあるのか?【高濱正伸さんインタビュー】

特集 「気がつけば父」 新・父親論 <第2回>

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Nov 22, 2016 by editors room Reporter

3 Lines Summary

  • ・メシが食える大人に育てるのが、子育てのゴール
  • ・父親よ、妻のサンドバッグになれ
  • ・父親の威厳は必要。年に1回くらいは雷を落としてもいい

世間的にはイクメンが増えているといわれる。

「父親」ではなく、「イクメン」。

このように呼び方が変わったのは、夫婦がともに働くなかで、従来の父親像には含まれていなかった家事や育児という役割が加わったことが理由だろう。

時代が変わって父親のあり方が拡大したのだとすれば、現代における、「父親の役割」とはどのようなものなのか。

『子どもを伸ばす父親、ダメにする父親』(KADOKAWA)などの著者、花まる学習会代表・高濱正伸さんの考えをうかがった。

“メシが食える大人”に育てるのが、子育てのゴール

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――まず、高濱さんが教育者として考えていらっしゃる子育ての目標をお聞かせください。

「私は1993年に花まる学習会を設立して教育に携わるなかで、基本的には社会的に自立できない人たちの問題を考えてきました。いわゆる“引きこもり”の問題で、子育ての最低限の目標は社会人として自立できること。その上のステップとして、人を幸せにできる、自分が役に立ったという肯定感を持って毎日を過ごせる人に育てることだと考えています。そのためには、親子の関係を含めて幼少期にどのようにして考える力を身につけるかを考える必要があると思い、様々な活動を行ってきたのです」

――そういう考えは、花まる学習会を続けてきたなかで、少しずつ方向性が見えてきたのですか?

「そうですね。学生の頃に思い描いていたビジョンと、働きだしてお金を稼ぐようになったときの見え方は違いましたし、自分自身が家族を持ったときにも大きな変化がありました。とくにうちの子は障がいがあるので、そういう子が輝けるのはどういう家庭か、どういう社会か。そのようなことを当事者として考えることで私自身が学んできたことも多いです」

――人が精神的にも経済的にも自立する。そのためには、どの時期の教育が大事だと思いますか?

「根本的には幼少期ですね。ただ、その時点で重要なのは、計算が速いとか幼稚園児なのに割り算ができるといったことではありません。なにか課題を与えられたときに『面白そうだ』と思える“好奇心”、どういうやり方をすれば達成できるかを考える“発想力”、そして、それを“やり通す力”。大きくはこの3つが大事だと思います。これらは社会に出てからも求められる力ですし、とくに最初の好奇心がなければ、学校の勉強だってゆくゆくはボロが出ます。ある時期までは一見優等生で成績もよいけれど、高校生くらいになると通用しなくなる。無理な期待に応えるための勉強は、つらいだけです。大学入試の数学も、『問題を解くのが面白くて仕方がない』という子は力を発揮するけれど、『点数のために』となるとどうしても弱くなってしまいます」

――考えることの面白さに気づけるかどうかが差をつけるわけですね。

「そうですね。とくに、自分で考えて、ルールを設定できるかどうか。そのためにはとにかく遊ぶことです。『今日は3人しかいないから野球はできないね』って言って、しょんぼり座っている子どもなんていないでしょう。『3人しかいないから、壁をキャッチャーにして遊ぼう』など、遊び方なら子どもたちもいろいろ考えつく。そういう経験があるかないかで、生きていくための応用力が変わると思います」

父親の役割は、妻のサンドバックである

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――高濱さんは親子を対象にした野外活動や父親、母親それぞれを対象にした講演も行っていますが、そのように多くの親子に触れてみて、今の父親の役割というのはどういうものだと思われますか?

「前提として、母親と父親では、母親の方が圧倒的に偉大なんだという認識を夫婦ともに持つ方がいいと思います。社会的な制度や共働きかどうかという問題ではなく、ほ乳類というのは基本的にそういうふうにできている。産んでおっぱいをあげられるというだけで大差がついていますし、そもそも子どもと母親は一体だったわけですから。実際に生徒の両親を見ていても、父親と母親では子どもに対するイマジネーションのレベルが違います。今日はちょっと寒いかなという日に、長袖か半袖かを考えるのが父親。母親は袖の長さだけでなく、重ね着の枚数や素材、生地の厚みまで気にしている」

――私も父親ですが、思い当たる節があります。

「私は父親の役割を、『母親が輝くためにできることをする』と定義しています。もちろん、家庭の事情にもよりますし、家事や育児を分担してイクメンができる人は、それをやればいいと思います。でも、それこそフジテレビの社員でそれができている人っていますか? “こっちだって朝から晩まで働いているのに、家のことも半分やれと言われるのはおかしい”と思う人の方が多いんじゃないでしょうか」

――昨今大きな声では言いづらいですが、そっちの気持ちもわかります。

「もちろん、共働き夫婦が家事を分担するのは当然のことですし、妻が一人きりで大変なときに『大丈夫? 俺がやろうか?』と歩み寄る姿勢は大切です。でも、現代の母親の本質的な問題というのは、50年前と比べて地域の社会が閉じてしまっていることです。昔は親族や地域のおばちゃんたちがグイグイと入ってきて、おむつはこうだ、嘔吐したときはこうだとアドバイスをくれたし、母親の苦労をねぎらってくれていました。そういう環境のなかで若い母親も支えられていたけれど、今の母親は孤立してイライラしています。男にできるのは、親縁や地縁がなくなったところを自分が支えるという覚悟です。サンドバックになろうが、愚痴られようが、逃げずに向き合う。その姿勢があるだけで、母親は絶対に裏切らない味方がいると思える。それが重要なんです」

――つまり、サンドバックとして打たれ、女性のストレスを軽減することが父親の役割?

「極端に言えばそういうことです。そのために一番いいのは話を聞くことですけれど、一般的に夫は妻の話を退屈だと思っている。男は要点と結論にしか興味がないから、オチのない話に耐えられないんです。そこに多くの悲劇が発生しているので、女性の話を聞くのが下手だと自認している人は、どうすれば妻がニコニコするかを考えてみましょう。ママ友とのお茶会のあとは機嫌がいいなら、お茶会にでも飲み会にでも送りだせばいいし、ジャニーズのコンサートがストレス解消になるなら、行かせればいい。妻が笑顔でいるために一番効く『カード』がなにかをわかっていて、応援すること。これだけでも、母親の精神的な負担は軽くなるんですよ」

父親の出る幕はどこにあるのか?

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――夫が妻をサポートすることが大切なのはわかりました。でも、そうすると男は間接的にしか子育てに参加できないんですか?

「幼少期でいえば、子育てにおけるだいたいのことは、母親の方が得意です。とくに“根拠のない自信”としかいえないものが人間のなかにはあって、それを子どもに与えられるのは母親によるところが大きいと思います。父親の方が得意なことをひとつ挙げるなら、『遊び』でしょうか。子どもたちを見ていても、『それは何が楽しいの?』というようなことで遊び始めるのは男の子。女の子は『バカじゃないの』と言いながら様子を見ている感じなんですよね」

――なるほど。子どもと一緒にバカになれるのが父親。

「ええ。ただ遊ぶだけではなく、お父さんがわが子と一所懸命に遊んでくれていると、家族としてひとつになっている感じがする。そのことでお母さんをホッとさせるのが目的なんだということはわかっておいた方がいいですね。それに、父親の遊び方って母親が『あんた、手がちぎれるでしょう!』って怒るくらい雑じゃないですか。それくらいがちょうどよかったりもするし、お母さんとではできない遊びをするのも父親の役割。『パパと遊ぶ方が楽しい』と子どもが思うくらいの遊び方ができれば、むしろ成功と言えるでしょう」

――最初にうかがった「自分で遊びを作り出す」という話にもつながりますね。

「つながります。やっぱり、お父さんが遊び上手だと、子どもにも伝染する。それに、遊び癖がついている親子だと、その関係を勉強にも持っていきやすいんです。勉強しなさいと言われて無理にやらされると子どもは楽しくないですが、『一緒にやってみようか』と、遊びの延長で子どもを誘うことができれば子どももすんなり取り組むことができます」

――ひと昔前の父親像って、頑固で恐いイメージがあったと思うんですが、今は友達のような関係の方が望ましいと思いますか?

「どちらも必要ですね。私は子どもの成長を大きく分けて小学3年生までの幼児期と5年生以降の思春期の二つだと考えていますが、とくに幼児期には、父親の威厳が必要です。いつも怒っている必要はないけれど、年に1回くらいは雷を落としてもいいと思う。人を傷つけちゃダメ、嘘をついちゃダメ、遅刻しちゃダメといったことを教えるのはしつけですから、悪いことをしたら叱られると子どもにわからせる必要がある。ただ、普段から一緒に遊んでいれば、パパは怒ったら恐いとわかったうえでも大好きだからくっついてきますよ。バシッと言うべきところは言って、あとはハッピーなお父ちゃんでいたらいい」

――思春期以降では、父親の役割も変わりますか?

「小学校、中学校、高校と子どもにとっての社会が広がっていくにつれて、父親にできることは増えていきます。たとえば子どもが学校の先生の愚痴を言っていたら、『先生だって朝から晩まで必死に働くなかでそういうことをやってるんだ』と諭すとか。働く人間の側から意見をする機会が増えますから。子どもが成長して大人に近づいていくときに、ますます父親としての役割が大きくなっていくでしょう」

プロフィール

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高濱正伸さん
株式会社こうゆう 花まる学習会 代表。1959年、熊本県生まれ。県立熊本高校卒業。東京大学・同大学院修士課程卒業。学生時代から予備校等で受験生を指導し、1993年に小学校低学年向けの「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した学習塾「花まる学習会」を設立。『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』(青春出版社)、『小3までに育てたい算数脳』(健康ジャーナル社)など、著書多数。

取材・文=宇野浩志
撮影=林 和也

【特集「「気がつけば父」 新・父親論」】

第1回  怖いor怖くない? 叱れるor叱れない? 今の父子関係【小学生親子座談会】

第2回  妻との関係、父親の威厳… 子育てに、父親の出る幕はあるのか?【高濱正伸さんインタビュー】(この記事)

第3回  “自称”イクメンになってませんか? 妻たちのホンネから、その実態を探ります

第4回  育休をとってようやく妻と対等のパートナーになれた 『経産省の山田課長補佐、ただいま育休中』の著者が語る

第5回  育児の向き不向きに性差はあるのか? 【脳科学者・澤口俊之氏インタビュー】

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