佐々木俊尚が指摘する「退位」論点の矛盾とジレンマ
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佐々木俊尚が指摘する「退位」論点の矛盾とジレンマ

一代限りの方向性が浮上した「生前退位」はどうなるのか?

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Jan 27, 2017 by compass Reporter

3 Lines Summary

  • ・有識者会議のまとめには「矛盾がある」
  • ・「一代限りの特例法」は前から決まっていた
  • ・天皇制は時代とともに変化していく
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天皇陛下の退位への対応などを検討する、安倍首相の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」がまとめた論点整理の内容が明らかになった。特定の結論は出していないが、退位は一代限りの特例にすべきとの方向性を示し、逆に全ての天皇を対象とする場合は次のような課題があるという。
1:その時の国民がその時の天皇を取り巻く状況を踏まえて、退位の是非を判断することが望ましい
2:将来の全ての天皇を対象とした個別的・具体的要件を規定することは困難
3:将来その時々の政治情勢を理由に天皇が退位するというような事態を招きかねない(など)
安倍首相への最終報告は3月末から4月上旬で、ゴールデンウィーク前後には法案を国会提出する予定。

佐々木俊尚「矛盾がある」

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この論点整理は結構矛盾しています。「一代限定にすれば、政治状況や国民の意識も確認できて的確な判断が可能だ」と言ってるんだけど、一方で「将来その時々の政治情勢を理由に天皇が退位するというような事態を招きかねない」としているんでしょ。政治状況・情勢に応じて、的確な判断ができるのか、的確でない事態を招くのか、何が違うかわからない。

要するに、皇室典範に盛り込んで制度化するとしちゃうと、恣意的に時々の天皇が退位することができるからいけないって話だと思うんだけど、一方で、今回 特別法を作って退位してもらうのなら、次も特別法を作ればいいって話になる。いつでも特別法で退位できますって事なら、それは恣意的な政治の介入にはならないのだろうか。

今の日本は、象徴天皇とはなんなのかとか、女系はいいのかとか、天皇制についてもっと根本的な議論しなくちゃいけないんですが、そこまでの準備ができていない感じがあります。その一方、陛下が退位されたいとおっしゃっているわけだから、そこは早くやらなくちゃいけない。この2つのジレンマの中で、「今回は判断しません」とまとめたのが、論点整理の内容なんじゃないのかなと思います。だからモヤモヤする。

光格天皇の譲位を参考にしたかもしれない

文化学園大学客員教授  渡邉みどりさん

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今回の論点整理は、やはり陛下のご意向をよく考えてできてると思います。国民からすれば、なるべく早いうちにご希望をかなえて、ゆっくりお休みになっていただきたいと考えている。天皇というのは、すごいお仕事ですからね。

陛下は、平成22年ぐらいから周囲の方と退位に関するお話をなさっていらしたようですけれど、その時に「光格天皇」を調べてほしいという、お話が出たということをうかがっています。

光格天皇 (第119代天皇)
現在の学習院に基礎となる教育機関を構想した。
1779年に即位し、1817年に仁孝天皇に譲位。1840年に70歳で崩御。

退位は「一代限り」でいい

皇室典範を改正した方がいいという考え方もあるかもしれませんけれど、陛下のご希望としては、時間はあまりかかってほしくないわけです。時代はどんどん変わっていきますから、その時はまたその時の人がお考えになればいいのであって、今はなるべく早く、陛下が一番お心が休まる方向に向かっていただきたい。私も一代限りで結構じゃないかと思います。

天皇陛下の在り方

日本はかつて大変な時代があって、赤紙一つでお父さんが戦争に持っていかれたり、家が空襲で焼けたりして不幸になった方がたくさんいました。両陛下は、そういう方のことをお忘れにならないで、慰霊と鎮魂の行事を続けていらっしゃいます。

東北の震災の時も、最初の1ヶ月間に、あのお年で7往復したというのは、なかなかできることじゃありません。しかもその前から両陛下は「全国豊かな海づくり大会」などで全国を回ってらっしゃるんですよね。そういう「ハレ」の時も「ケ」の時も来てくださるのは、やっぱりありがたいと思いますよ。日本中の方が、両陛下を尊敬するっていうのは、同じ世代の人間として分かる気がします。

被災地においでになって、しかも高いところから見るんじゃなくて体育館の床に膝をついて、ワイシャツを腕まくりして、「大変でらっしゃいましたね」って天皇陛下にそう言われたら、やはりみんな元気が出ると思います。

退位されたら、そういう立場としての公務が出てくるんじゃないですか。また国民から「ぜひ来ていただきたい」というリクエストがあるかもしれません。そうなると行かないわけにはいかないでしょう。お二人とも行動派でいらっしゃるから、おいでになると思いますよ。

「一代限り」の「特例法」はあらかじめ決まっていた

神戸女学院大学文学部准教授  河西秀哉さん

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政府は、有識者会議が設置される前から、一代限りの特例法でやるという方針を固めていて、それを追認する形になっています。有識者会議で座長代理を務める御厨貴さんも、最近のインタビューで基本的にその方向でやってきたとおっしゃっています。

私はどちらかといえば特例法には懐疑的です。特例法にしない場合は恣意的な退位を認めてしまうと言うんですが、実際は特例法も同じことが言えると思うんです。恣意的な退位をさせないためには別の基準を作ったほうがいいんですが、それを決めようとするとすごく時間がかかる。どの天皇にも当てはまるような、つまり恣意的じゃない退位の要件は、時代や人によって違わないようにするのがなかなか難しい。例えば、ある年齢を退位の要件にしようとしても、30年後は100歳でも元気な人がいっぱいいる世の中に代わる可能性があるので難しいでしょう。

天皇陛下の在り方

象徴天皇の在り方は時代によって変化しています。昭和天皇の時代に、象徴天皇に変わったんですが、当時の人々は戦前との連続性みたいなものがあるため、天皇に対する強い権威性を持っていました。

今の時代は権威性を持つ人がだんだん減って、メディアを通して天皇を見る人たちが増えています。そんな中で、天皇陛下は公務を見せることで尊敬を得ています。戦前のような、とにかく偉いんだと思うのではなく、天皇のお仕事を見て、尊敬できるという事に変化していると思います。

昔の人は、学校などで「天皇はすごく偉い」とか「神様の末裔である」とか「現人神である」という事を教えられていたので、公務を見る感覚も今の我々とはだいぶ違うと思います。

今上天皇は、今と昔をうまくソフトランディングさせたというか、国民の感情との関係性の中で自分の行動のしかたを模索してきた天皇なのかなと思います。

象徴天皇制は、社会に応じて変化を遂げているので、国民との接し方も、この先は変わっていくと思います。例えばイギリス王室のようにTwitterをやることだってありえるでしょう。

皇室典範改正は難しい

政府としても変えたくないのではないでしょうか。保守的な人たちの中には、とにかく皇室典範を変えたくないっていう人がすごくいると思うんですね。そんな人たちは、退位だけの問題ではなくて、その後に問題になる女性皇族とか、女性の宮家とか、女性天皇に議論につながることを恐れているんです。

日本の政治家は、皇室をアンタッチャブルにしているというか、自分のところで変えるのが怖いというか、とにかく問題を先送りしてきたのだと思います。今回は、皇室について今まで一番模索してきた当人である天皇陛下から、もう少しみなさん考えてくださいというような提起がされたんだと思います。

佐々木俊尚のまとめ

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天皇は、戦前だと「現人神」と言われました。当時は「御真影」という天皇皇后ご夫妻の写真を家の中に飾っていて、見える姿はそれだけだったんですね。だからこそ、戦争が終わったとき天皇は、神様ではありませんという人間宣言をして、そのあと各地を回ったんです。

それまで軍服を着て白い馬の上に乗ってた昭和天皇が、普通のスーツに帽子をかぶって全国各地を行幸する。それで初めて天皇陛下が同じ目線でしゃべるところをみんなが見た。普通に握手してくれたりして、びっくりした。ただ、戦前に育っている人は、天皇は「現人神」だという意識を強く持っていたから、昭和天皇のころは、ある種の神的な権威性みたいなものが日本人の中にあったのだと思います。

それが平成に入って、今の天皇陛下の時代になってからは、そういった権威は薄れていく。もはや戦前の「現人神」をやっていた経験は、今の陛下にはないわけです。すると逆に、テレビの画面を通して姿を伝えるようになった。

被災地の避難所に行って、腕まくりをして、握手して、肩をさすりながら被災者の人に呼び掛ける。そういう姿を見てみんなすごい親しみを感じた。

3.11のときは震災だけでなく、福島の原発がボカンと爆発して、東京に放射能が来るとか不安におののいていたわけだよね。その時に、陛下が皇居からメッセージを出された。それを見て、陛下が皇居にいるうちは東京にいても大丈夫だろうと思った。これがもし京都御所からの映像だったら、ちょっと逃げた方がいいかなと思うだろうから、陛下がそこにいる安心感とか存在感とか、あの時の東京にいた人間にはすごく大きかった。そこにいらっしゃることによる安心感みたいなものが大事なんだよね。

ただ、川西さんも話していましたが、天皇の在り方はこれからも時代とともに変わっていくんでしょう。

https://www.houdoukyoku.jp/archives/0004/chapters/27028

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