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「原発事故よ、ありがとう」震災から6年、福島の高校生がセリフに込めた深い意味

特集「被災地、東北の今」第2回

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Mar 06, 2017 by gogo Reporter

3 Lines Summary

  • ・東日本大震災をテーマに福島の高校生が作り上げた演劇『数直線』
  • ・福島の高校生が今何を思い、何を伝えたいのかがリアルに描かれている
  • ・西山喜久恵アナの心に最も刺さった言葉は「ありがとう」
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東日本大震災をテーマに福島の高校生が作り上げた演劇

西山喜久恵アナウンサー:まもなく東日本大震災から6年が経とうとしています。そんな中、福島県立ふたば未来学園の演劇部の生徒が震災をテーマにした演劇『数直線』を作り上げ、2月上旬に東京で公演が行われました。『数直線』は演劇部の生徒たちが体験したことを基に作られた演劇で、今、福島の高校生が何を思い、何を伝えたいのかがリアルに描かれています。

まずは冒頭のシーンをご覧ください。

主人公は東京から福島に転校した女子生徒

西山:主人公は、東京の中高一貫校から福島のふたば未来学園に転校してきたサクラ。劇中ではサクラが地元・福島で被災した子どもとの間で葛藤したり、「どうせサクラは他人事なんでしょ、震災って」というセリフもあったりとか、まさに彼女たちがふたば未来学園で体験したリアルな出来事が基になっています。
今、ふたば未来学園では何が起こっていて、生徒たちは何を感じながら震災から6年経った今を生きているのか、が実にうまく描かれているんです。

ふたば未来学園とは

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西山:震災と原発事故の影響で双葉郡にあった5校は授業のめどが立ちませんでした。そんな中、地元の自治体やいろんな人の力を借りて震災から4年後の平成27年4月、福島県双葉郡広野町にて開校したのがこの福島県立ふたば未来学園。今年の4月には、3年生・2年生・1年生の3学年が初めて揃うんです。

教育活動も特色があり、それがこちら。

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ふたば未来学園と西山アナの縁

西山:私と佐々木恭子アナが去年の6月、1年生の教育活動にある「地域の課題を探る」のお手伝いをしたんです。

生徒たちが地域のいろんな方、駐在所の方とか市役所の方とか、東電の方とかに「今の課題は何ですか?」とかいう風にインタビューをしに行くんですね。初年度はインタビューをしに行けと言われても、核心をつけずに帰ってきたりとか、先生たちが「やり直し」と言うようなインタビューになってしまったらしいんです。それで私と佐々木アナのところに「インタビューの極意を教えてくれ」という話がきて、私たちは喜んで行きますということで指導をしたんです。

そしたら、その学年の生徒さんたちはすごく役立ったというか、いろんな偉い方だとか、自分よりも目上の人に話を聞くときにどういう気持ちで接したらいいかということも分かったって…あと、その人たちの言葉の裏側にあるものとか、そういうものを見つけ出してインタビューできたと。それで「今年度はいいお芝居ができましたよ」ということだったんです。

そうこうしている内に学校の副校長先生から、「実は今年、ふたば未来学園の演劇部が福島県の演劇コンクールで優秀賞をとりました」と。「その作品が東京で公演をするのでぜひ観に来てください」といって観に行ったのが、この『数直線』だったんですね。

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震災をテーマに演劇を作ることに反対する声も

西山:演劇部の皆さんが今年、震災をテーマにした演劇をやろうとする一方で、反対する生徒さんもいたそうなんです。やらなくてもいいんじゃないだろうか、自分で自分の心をえぐるようなことになるので、何も私たちが震災をテーマにした演劇を作らなくてもいいんじゃないかと。

「震災を演劇にしたい」と思わせたある言葉とは?

西山:「いや、でも震災をテーマにした演劇を作りたいんだ」ということで、脚本・演出を手掛けた2年生の佐藤美羽さんという方がいるんですけれども、佐藤さんがどうしても作りたいと思ったきっかけがあって、先生の知り合いの岩手の方に「もう皆さん、帰れるんでしょ?みんな帰ってるんでしょ?」ってすごく軽く言われたんですって。「いや、そんなことないです。未だに帰れない苦労している人、いっぱいいる」と。彼女たちにしてみれば岩手の人も同じ被災した仲間のような気持ちだったんです。

だけど、仲間だと思っていた人たちでも全て分かってくれているわけではないんだと思って、今、自分たちがどういう状況でどういうことを思って、何が一番伝えたいとか、これが楽しいとか、これが面白いとか、思っていることをリアルに伝えなきゃって思ったそうなんです。

それで今回、震災をテーマにした演劇を作ろうということで、美羽さんが中心になって演劇部が作り始めたんですね。

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心に刺さるセリフがたくさんある

西山:震災をテーマにした演劇を作るにあたって、美羽さんがいろいろ考えるだけだと煮詰まってしまうのと、どうしても抽象的な演劇になってしまう。
そこで何をやったのかというと、みんなで輪になって演劇部のみんなで今まで自分が体験した被災したときのつらい話でもいいし楽しい話でもいいし、「とにかくどんな思いをしてきて、今ここにいるのかという話をしよう」じゃないかと。

美羽さんが言っていて印象的だったのは、ふたば未来学園に来ている生徒はみんな苦労していると、被災者であり、避難してまだ帰れない人もいたりとか、程度の違いはあれ、いろんな経験をしてるから、実はみんな「どんなに大変だったの?」と聞けない。今までもあんまり聞いたことがないそうなんです。

友達のそういう部分にあんまり入っちゃいけないという思いが強すぎて、そういうことをやらなかったんですけど、今回、震災をテーマにした演劇をやろうといったときに、思い切ってみんなの体験を聞いたそうなんです。

そしたら、その体験がすごくて、話している途中で泣き出しちゃう子もいたりとか。
そこでみんなで出し合って、それを基に、今感じていることを本当にリアルに演劇にしていこうって、いろんな場面場面、学校での遊びのような場面で本音がポロっと出てきたりとか。ひとつひとつのセリフが実は、みんなの思っていること、経験してきたこと、何か深ーいものがいっぱいっぱいあって心に刺さるセリフがいっぱいあったんです。

西山アナの心に最も刺さった言葉は「ありがとう」

西山:この演劇に出てくるセリフで私の心に一番刺さったのが「ありがとう」という言葉なんです。「ありがとう」っていうのは普通、いい意味で使いますよね。感謝を表す意味です。だけど、脚本・演出を手掛けた佐藤美羽さんは「ありがとうって実はすごい深い意味があるんじゃないか」ってことで、演劇の中のあるシーンではこういう風に使っているんです。

ネガティブな言葉+「ありがとう」が持つ意味

西山:聞いていて、いろんなことを考えさせられたんですけど。ネガティブな言葉に「ありがとう」が加わると、何とも言えず「ありがとう」の重みが違ってくるなぁと思いまして。

このセリフを美羽さんは「本当に大切にしているセリフなんです」と言っていて、今回このセリフを言っているのは青木くんという男の子なんですけど、青木君は楢葉町だったんですよね、それでまだ帰れてはいない。なかなか大変な状況ではあるんですけど、彼に「ありがとうをどういう気持ちで言ったの?」って聞いたら、「地震と津波、ありがとう」「原発事故よ、ありがとう」、この2つの「ありがとう」は本当の「ありがとう」なんですって。

「ありがとうって言える状況じゃないじゃない?」って聞いたら、「地震と津波があって原発事故があって、でも僕はこうやって今、ふたば未来学園に通えていて、いい友達もできて、(地震、津波、原発事故)はとてもネガティブな言葉なんだけれど、これが起こったおかげで友達ができたんです。こんな素晴らしい学校に通えています」って堂々とまっすぐな瞳でそういう風に言われて涙が出そうだったんですけど。

それで最後の「家に帰して、ありがとう」っていうのは「この野郎ー!」っていう気持ちで「ありがとう」を言ったんですって。

だから、同じ「ありがとう」だけど、この「ありがとう」だけは性質が違うんですよって言っていて、この演劇のひとつの「ありがとう」という言葉なんだけれど、すごい深い意味があるなぁと思っていて。これをいろんな人に分かってほしいなぁ。
リアルに今、福島の高校生が考えていること、気持ちが凝縮されているんじゃないかなぁと思いました。

「そんなに心配してもらわなくても大丈夫」

西山:(「ありがとう」のセリフを言った)青木くんには「そんなに心配してもらわなくても大丈夫なんです。僕は楽しく高校生活がやれているし、そういったところもぜひ伝えて知ってほしいんです」っていう気持ちもあって、原発の影響があって大変っていうのはあるけれども、そうじゃない部分、日常を楽しめている部分も、もっともっと理解してほしいっていう気持ちもあるんだっていうことを聞いて、私たち伝える側として、ちゃんと彼らと向き合って取材して伝えなきゃいけないなぁって思いました。

「みなさんは福島と聞いて何を思い浮かべますか」

西山
最後に『数直線』の脚本と演出を手掛けた佐藤美羽さんのコメントを読み上げます。

福島と聞いて何が浮かびますか。
私たちの殆どは震災に関することです。
5年も経ってるんだ。震災は終わったという人がいるかもしれません。そう考えてもいいと思います。
しかし今もまだ解決していないものがあります。
また、震災があったという事実と未だに向き合う事ができない人もいます。
震災を起点に確実に何か人生に変化があったと思います。
親にさえ無意識に話すことがなかったことを自分たちがやりたいものは何かと上演するまでに持ってきました。
今、私たちは福島県双葉郡広野町のふたば未来学園にいます。
みなさんは福島と聞いて何を思い浮かべますか。
今どこにいますか。

※この取材の様子は3月11日「新・週刊フジテレビ批評」にて放送予定。

【特集「被災地、東北の今」】

第1回  自分の無力さを痛感した――。被災地出身者が語る、あの日

第2回  「原発事故よ、ありがとう」震災から6年、福島の高校生がセリフに込めた深い意味(この記事)

第3回  「被災者」というレッテルに苦しめられた。『しんさいニート』の著者が明かす、311以降の日々

第4回  「原発避難いじめ」はなぜ起こってしまうのか?その原因は、大人にあった

第5回  数十秒で死ぬ場所? 福島第一原発内のローソンは「生茶」も「うまい棒」も買える

第6回  震災とVRの意外な関係性。福島第一原発の中に入ってみると…。

第7回  隣町のコンビニ時給は1300円。避難指示解除でもハッピーエンドではない被災地の課題

第8回  知られざる、「原発20キロ圏内」での暮らし。そこで奮起する人々の姿

第9回  福島は、原発は、将来どうなる?「あの人」の意見が聞きたい。

第10回  『原発に最も近い映画館』が教えてくれた価値

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