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隣町のコンビニ時給は1300円。避難指示解除でもハッピーエンドではない被災地の課題

特集「被災地、東北の今」第7回

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Mar 11, 2017 by Shimizu Toshihiro Reporter

3 Lines Summary

  • ・「避難指示解除」がハッピーエンドではない
  • ・避難先で新たなアイデンティティを育んでいる人もいる
  • ・100%村民が戻ってくるのは、もはや不可能

「ものすごい田舎でビックリしたでしょう。復興なんて言っていられませんね。急激な人口減少と超高齢化社会にどう立ち向かっていくかが今の川内村の状況なんです」

去年、村の全域で避難指示が解除された川内村を訪ねると、遠藤雄幸村長は、自嘲気味にそう語った。そして、当時の状況や今の課題、苦しい想いなどを説明してくれた。

「我々自身が避難することになるとは…」

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2011年3月11日、東日本大震災で大きな揺れと津波が発生しました。福島県の双葉郡にとっては放射能との戦いが始まった瞬間でもあります。

3月11日、川内村は震度6弱を記録しました。けれど、地震による被害はほとんどありませんでした。

翌12日早朝、隣の富岡町の町長から電話がありました。「原発の様子がちょっとおかしいみたいなんだよ、2~3日だと思うけど避難させてほしい」という電話でした。この日は土曜だったので、役場職員を集めて、迎える準備をしました。

僕自身も朝6時過ぎに自宅を出たんですが、車の多さにびっくりして、これはひょっとしたら大変なことになるんじゃないかなと感じました。やがて、人口3000人の川内村に8000人が避難してきたのです。けれど、この時点では、我々自身が避難することになるとは想像だにしていませんでした。

特に恐怖を覚えたのは3月14日の3号機の爆発シーンです。富岡町の職員や議員の中には、東京電力の職員がいて、テレビを見ながら我々に説明をしてくれていたんです。1号機の時は「水素爆発は建屋がちょっとふっとんだだけだ」とか。しかし、3号機の時には言葉を失っていました。「信じられない、まさか…」と言っていたのを覚えています。

12日から15日まで恐怖感でいっぱいでした。

15日にテレビで、枝野官房長官が「屋内退避をして」と指示を出したのを見ました。この指示を聞いて、僕らが思っている以上に状況は悪いんだな、川内村も避難を余儀なくされるんじゃないかな、と思いました。そして、その日の午後には「自主的にそれぞれ自分の車で避難して」と防災無線で案内をし、16日には富岡町長と相談して郡山へ避難したのです。

放射能という未知のものへの不安。情報伝達の手段はテレビしかありませんでした。衛星電話で連絡もしていましたが、あまりロケーションが良くなく、途切れてしまうこともあり、タイムリーに情報が入ってきませんでした。

住民もこの頃から国や東京電力の言うことは信じられないと思うようになっていきました。これが現在も復興の大きな障害となっていると感じています。

言われなき差別も経験してきました。環境変化の中で、高齢者や子どもたちが体調を崩すこともあったし、今後どうなるのか先行きが見えない不安から精神的なストレスも感じています。

福島県では、直接死よりも関連死が増えています。原発関連死といってもいいでしょう。川内村では93人が関連死で亡くなっています。

避難指示は解除されたが…

2011年9月に原発20キロの圏外で、避難指示が解除されました。そのうち全域で解除されるだろうと住民の懇談会を重ね、除染計画、復興計画も作りました。しかし、懇談会をやればやるほど戻ってくるのは難しいと感じるようになったのです。

子どもたちのいる世帯は「村長、まだ戻れないでしょう。子どもたちの生活が心配だよ」と。介護をどうするのか、働くところはどうするのかという声もありました。一方で、高齢者の中には「村長、俺は死ぬときは自分の家だからね」と訴える住民もいました。

それでは、戻れる人から戻ろうと。戻りたくない人を無理に戻すのではない形で、帰村宣言をしました。小学校、中学校、保育所、診療所などを再開し、役場機能を最前線に戻したいと思ってきました。

そして、去年6月14日、避難指示区域が全村的になくなったのです。

それでも、各々の戻る・戻らないの選択を尊重したい。それぞれ放射性物質の捉え方は違います。戻らないという選択の人もサポートしたいと思っています。

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「解除してハッピーエンド」ではない

今は教育が一番難しいと感じています。小中学校で戻ってきたのは4割です。時間の経過とともに子どもたちが避難先の先生や生徒と仲良くなっているので、若い夫婦にすれば川内村に戻るのは再移住みたいな感覚なんですね。故郷に戻るという感覚はもうない。「子どもたちが卒業するまでは…」という親世代もいます。

6年も川内村から離れていると、村へのアイデンティティはない。将来は故郷に戻ってねと言っても、自分たちの故郷はいったいどこなのか。住所は間違いなく川内にあるが、実際には避難先で学んでいる。

中山間地域にとって、学校はコミュニティーの中心で、地域との関係性を育む場所です。川内村を卒業していない子どもたちは、避難先の学校が母校になってしまうと思います。

急激な人口減少で、超少子高齢化が問題です。本当にこのような状況で、自治体として存続することができるのかどうか不安に思っています。

今の帰還率を見ると、「解除してハッピーエンドだね」とはいかない。解除してからが再スタート。いつまでも被災地だということは言っていられません。新たな課題に取り組んでいくしかないんです。

被災地同士の“奪い合い”

もともと川内村の生活圏は隣の富岡町や大熊町でした。買い物は富岡町、病院は大熊町、仕事もそちらに勤めていたという人が多かったんです。川内村が復興しても、富岡町なども復興しないと元には戻りません。

一方、復興を進めていく上で、労働賃金が上がっていて、川内村のファミリーマートの時給が900円なのに対して、富岡町のコンビニは1300円という店舗もあります。あえて、そちらに移り住みたいという声は聞いていませんが、給料のいいところで働きたいという思いの人もいるかもしれません。同じパイの中で奪い合いが少なからずあるのは事実です。

また、どうしても各自治体で同じような整備が進みます。買い物ができる商業施設が欲しい、病院・診療所も欲しい、特養施設も欲しい。気づいたら8つの町や村で、同じものが8つ揃うという状況が生まれる可能性もあります。

帰還を判断する材料がそういうところにあるため、今は各自治体が一生懸命作っていますが、そんなに遠くなくスクラップになっていく場面も想像できる気がしてなりません。

――将来的な合併などが自治体同士で話題になることはありますか?

お茶を飲んだりする会議では、そういう話が出ることもあります。ただ、住民の人たちで、帰還したい、戻りたいと願うのは、川内村なら川内村、富岡町なら富岡町に、だと思うのです。

合併が先行することによって、ひょっとしたら帰りたい気持ちを萎えさせるのではないかと懸念されている首長さんもいます。たとえば「川内村」という名前がなくなって、「双葉市」みたいになったら、住民はどう感じるだろうなと。

広域で物事を進めていかないといけないというのは事実ですが、いま、あえて公式の場で合併の議論をするのは早計かなと思います。

――「復興のひとつの区切り」はありますか?

100%村民が戻るかというと難しい、不可能だと思います。全ての町村の避難指示が解除されて、ある程度生活がそこでできる環境になったり、子どもたちが放射能を意識しないで大きな声で笑ったり運動したりすることができれば、一区切りなのかなと思いますが、今の状況からすると、まだ時間がかかるかなと思います。

5年、10年というわけにはいかないかもしれませんね。

【特集「被災地、東北の今」】

第1回  自分の無力さを痛感した――。被災地出身者が語る、あの日

第2回  「原発事故よ、ありがとう」震災から6年、福島の高校生がセリフに込めた深い意味

第3回  「被災者」というレッテルに苦しめられた。『しんさいニート』の著者が明かす、311以降の日々

第4回  「原発避難いじめ」はなぜ起こってしまうのか?その原因は、大人にあった

第5回  数十秒で死ぬ場所? 福島第一原発内のローソンは「生茶」も「うまい棒」も買える

第6回  震災とVRの意外な関係性。福島第一原発の中に入ってみると…。

第7回  隣町のコンビニ時給は1300円。避難指示解除でもハッピーエンドではない被災地の課題(この記事)

第8回  知られざる、「原発20キロ圏内」での暮らし。そこで奮起する人々の姿

第9回  福島は、原発は、将来どうなる?「あの人」の意見が聞きたい。

第10回  『原発に最も近い映画館』が教えてくれた価値

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