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日本の与党では「全面禁煙は無理」
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日本の与党では「全面禁煙は無理」

「受動喫煙防止策」の厚労省原案から見えてくる日本の政治の問題点。

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Mar 07, 2017 by compass Reporter

3 Lines Summary

  • ・飲食店を禁煙にしても売り上げは落ちない
  • ・正論でも合意されなければ制度にならない
  • ・佐々木俊尚「次の段階に期待」

3月1日、厚生労働省は東京オリンピック・パラリンピックに向けた受動喫煙防止策の原案を公表した。
この原案を健康増進法改正案に盛り込み、今国会への提出を目指しているが、たばこ産業や飲食業界の危機感を背景に、自民党などから反対の声が上がっており、調整は難航が予想される。

「受動喫煙防止策」原案の中身

・食堂やラーメン店、居酒屋や焼き鳥屋などを含む飲食店は、たばこを吸うためだけの喫煙室の設置を認めた上で禁煙。飲食店のテラス席は屋外でも禁煙となる。

・学校や病院は敷地内禁煙、大学や官公庁は屋内禁煙で、喫煙室の設置は認めない。ただ、これらの施設にある既存の喫煙室については、検討した結果、一定の基準を満たせば5年間存続を認めることにした。

・電子たばこなどの煙が出ない新型たばこは、受動喫煙の影響が不明なため、規制の対象にするか検討を続ける。

・一方で、旅館・ホテル・老人福祉施設の個室、たばこが目的のシガーバーは喫煙を認める。

・未成年が利用しないバーやスナックなどでは「大人数で入れない」広さの30平方メートル以下の小規模店を例外として喫煙を認める。

・禁止場所で喫煙する人には、まず施設管理者が制止した上で悪質な場合に自治体職員が対応・指導や中止命令を出し、違反者に30万円以下の過料を科す。

・飲食店などの施設管理者には、喫煙の禁止場所を掲示する義務を課し、違反した管理者は50万円以下の過料とする。

ご覧の通り、複雑で非常に分かりにくい受動喫煙防止策の原案。
そのポイントを改めて整理し、佐々木俊尚が専門家2人に問題点を聞いた。

「受動喫煙防止策」原案のポイントを整理

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なんだか分かりにくいんですけど、産経新聞が掲載した「受動喫煙防止の厚労省原案」の表を見ると分かりやすいかなと。

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飲食店、事務所、ホテル・旅館は、喫煙室を設置すれば大丈夫。ただし、小さいスナックやバーは、たばこを吸ってもOKですよと。

30平方メートル以下って書いてあるから、30平方メートルはマンションで言うと1LDKぐらいな感じ。あれぐらいのイメージって考えると、カウンターとテーブルが2個ぐらいあるスナックみたいな所とか、それぐらいならOKだよねっていう話。
それで、病院・学校は敷地内はダメですよと。そりゃそうですよね。
建物の外にたまに喫煙所が置いてあるケースがあるんですけれども、あれもダメなんですね。

バス・タクシーは全面禁煙。これは今はすでに、おおむねこうなってますよね。
そして、過料がすごいですよね。喫煙者で違反したら30万円以下。今でもほら、路上禁煙条例とかあるじゃないですか、千代田区とか。千代田区の過料は2000円とわりと低め。これが30万円以下、一気に上がります。

違反の管理者というのは、たばこを吸っちゃいけないお店の経営者なのに、こっそり吸わせたみたいな人が悪質だと50万円以下の過料になるということです。

佐々木俊尚の視点


健康のためにたばこを止めましょうというのは前提条件としてあるんだけれど、一つの権利としてもあるわけじゃない、たばこを吸うっていうのはね。もちろん、受動喫煙というか、煙が流れてくるというのは迷惑なんだけれど、たとえば完全に囲ったところで吸うんだったらいいんじゃないかとか、たばこを吸う人しか来ない店だからいいじゃないかっていう意見も成り立つわけです。

実際、田舎とか行くと、たばこ吸うおじさんしか行かない喫茶店とかあるんです。意外に大きい喫茶店でもね。そういうところを禁煙にしちゃうと、お客さんがいなくなっちゃうっていう問題があるよねと。

1つのポイントとしては、どこまで厳しくするのかっていうね。

厳しさのバランスっていうのをどこかでとるべきなんじゃないかっていうのと、もう一つ、よく言われているのは禁煙にしちゃうとお客さんが減る。(それが)本当なのかどうか。経済への影響があるのかどうか。この辺りがポイントになるのかな。

「30平方メートル以下のスナック・バーは例外」はおかしい

産業医科大学 健康開発科学研究室教授 大和浩さん

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「30平方メートル以下のスナック・バーは例外」というのは、私はおかしいと思いますね。かつて、スペインが100平方メートル以上と以下で分けたことがあるんですけど、そうすると、お客さんから見ると、吸っていい店なのか吸ってはいけない店なのか、入ってみないと分からないんですよ。混乱を招いてしまったので、数年後にはすべてが全面禁煙になったんですよ。それで人間の体の反応は、30平方メートル以下で働いている人だけ受動喫煙の影響を受けないなんてあり得ませんからね。

今回の健康増進法改正案の目的は、受動喫煙の悪影響を排除するためのものなんですよ。今のところ、たばこを吸う人の利便性だけで問題が提起されていますけれど、その場所で毎日6時間とか8時間とか働いている従業員さんたちの健康を守るっていう観点から、この問題は議論するべきだと思うんですけど。たばこ臭い場所で働きたい人なんていませんよ。

飲食店を禁煙にしても売り上げは落ちない

WHO(世界保健機関)が86の論文をまとめていて、これによると結論は「変化なし」もしくは「増える」なんですよ。

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たとえば、カリフォルニアが1995年に全面禁煙になっているんですけれども、そのときに「アルコールを提供しているお店」と「アルコールを提供していないお店」で分類しながら、その後の売り上げの経過をずっと見ていくと、アルコールがあってもなくても(売り上げが)増えているんです。

それは私たちのように、たばこの煙を嫌がって、焼き鳥屋さんに行かない人間がたくさんいるでしょ。そういう人たちがお客さんとしてやってくるようになるし、たばこを吸う人たちは吸いたいときだけ、ちょこっと外に出て吸って、戻ってくるという行動にすぐ慣れるんですよ。

もうすでに東京なんかでも、自主的に全面禁煙にしている焼き鳥屋さんなんかはありますよね。そういう店のオーナーの方がインタビューに答えていましたけど、売り上げ1.5倍ですって言って喜んでいましたよ。

違反に対する過料の厳しさは評価

これまで健康増進法で欠点があると言われていたのは過料がなかったことなんです。
たとえば、この前もですね、私、北京に行ってきたんですけど、北京も2022年の冬のオリンピックを目指して、北京市は全面禁煙になっているんですね。

ポスターがあちこちにあって、「違反喫煙を見つけた場合にはこの番号に電話してください」って書いてあるんですよ。それで個人は200元、これは日本円でいうと8000円に相当する金額なんですよ。

事業所側は1万元で16万円に相当するぐらいの金額を払わないといけないんですよ。
これに比べると、今回の30万円、50万円というのは金額が大きいんですけれども、このぐらいの金額を設定しておくと、みんな自主的に守りますから。

たばこ税の税収2兆円は“いい財源”

NPO法人社会保障経済研究所代表 石川和男さん

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たばこには、たばこ税っていう特別な税金がかけられているんですね。その税収が大体、この20年ぐらい、年間2兆円ぐらいなんですよ。販売実績の本数は減っているにもかかわらず、税収はあまり変わらない。

1996年から2016年までの20年間で、販売実績は半分ぐらいに減っているんです。だけど税収は、1996年は2兆1000億円で2015年も2兆1000億円なんです。だからそういう点で言うと、健康問題は置いておいて、税金をとってそれを何にあてるか、それはほとんど社会保障にあてられちゃうと思うんですけど、そういう観点からすると、政府にしてみたら、いい財源ではありますよ。

日本の与党では全面禁煙は無理

全面禁煙は、日本の与党じゃあ無理ですね。

麻薬とか危険ドラッグとか元々やってはダメなものを、もっと厳しくするっていうのはみんなやるんですよ。ところが、たばこの場合は吸っていた人が多くて、それに困って減らすっていう話ですよね。つまり、これは既得権を奪うものなんですね。

精神的既得権も奪っちゃうし、あとは本当にやらしい話なんですけど、税源ということで考えると、相当寄与していますからね。2兆円というのは大きい。どうして大きいのかというと、消費税率1%が今の経済状況でいうと2兆5000億円なんですね。たばこ税の税収は、消費税1%に近いんです。

そうすると、政府全体で財源がないですねという話になったときに、どうしても税収というのは目に見える数字なんです。ところが健康被害の方は、なかなか目に見えないんです。あくまでも推計でしかない。税収というのは推計ではない、パチッと出てきちゃうんですよ。

そういう全く別の価値観でいうと、全部やめるっていうのは難しいです。

受動喫煙防止策の原案が複雑になった理由

厚労省が出した受動喫煙防止策の原案を見ていると、ものすごく複雑なんですよね。
たとえば、お役所だとか、社会福祉施設だとか、そういうところは建物の中は原則、禁煙にするんだけれども、医療機関や小学校については敷地まで全部禁煙。

ところがホテルの中だと、一応、原則禁煙と言っておきながら喫煙室を置くならいいよとか、制度が複雑なんですよ。それぞれの縦割りの中で利害調整をしちゃって、そうなっちゃうんです。日本的な政策は縦に決まっちゃうんです。

たとえば、総理一人が「やるぞ」って言っても、なかなかやれないんですよ。

正論でも合意されなければ制度にならない

田舎は都会と違って広いから、田舎の方は(受動喫煙に)あまり意識がないって言うんですよ。だからどうしても、日本の政治の制度っていうのは地方から出てきた議員の方が圧倒的に多いじゃないですか。

そうすると政治的関心でいうと、保育園に似ているんですよ。あれも都会だけの問題ですよね。政治の意思決定システムがこういう風な国だと、どんなに正論であっても合意されなければ制度にならないので、今回の受動喫煙防止策の原案が2017年、現時点で日本でやれるせいぜいのことなんじゃないかなぁと思います。

佐々木のまとめ「次の段階に期待」

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東京と地方の温度差は大きいかなぁと。

数字は分からないですけど、東京23区内の喫煙率ってものすごく低いと思うんですよね。身の回りでレストランとか居酒屋に行っても、たばこを吸う人ってそんなにいない。10人に1人、いるかいないか。たぶん1割とか。田舎に行くと、自分の実家とかに帰ると、周りのおじちゃんがみんな吸っているとかいう感じだから、頭の中の印象を数字でいうと4割ぐらい吸っているんじゃないのと。

東京1割、田舎4割みたいな感じ。分からないですけどね。そうすると、その地方でみんな吸っていて、土地も広いし、店も広いし、車の中も禁煙じゃないし、パカパカ吸っているなか、なんで禁煙しなくちゃいけないのってなっているところで、そこから出てきている永田町の先生たちが「そんなもん禁煙なんか言ったら票とれんぞ」みたいな話になるのは、それはそうなのかなって思いますよ。

地方にいると、東京の過密なこの町の中で、狭いビストロで横でたばこを吸われたら嫌だよねっていう感覚はたぶん通じないんじゃないかな。

結局、地方の話がメイン。地方から法律から何から出てくることを考えると、地方はあんまり禁煙という話になっていないので、なかなかうまく進まないよねと。永田町、とくに自民党は禁煙に積極的ではないので、厚労省は相当頑張って原案を作ったんじゃないかと。だからここまでいっただけでもよしとすべきじゃないかと。まぁ次の段階に期待して、徐々にたばこがなくなっていくことを望みましょうっていう感じですね。

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