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佐藤可士和×悦子夫妻【後編】視野を360度に広げ合う存在
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佐藤可士和×悦子夫妻【後編】視野を360度に広げ合う存在

連載「あの人の夫婦関係」第1回。
クリエイティブディレクター佐藤可士和さんとクリエイティブマネージャー佐藤悦子さんによる夫婦対談、後編。

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Apr 11, 2017 by editors room Reporter

3 Lines Summary

  • ・結婚には「センス」が合うかどうかが重要
  • ・たとえ家族でも自分の思いは口にしないと相手に伝わらない
  • ・夫婦は向かい合い、お互いの見えない背後を見て補い合い、視野を360度に広げ合う

前回に引き続き、クリエイティブディレクターである佐藤可士和さんと夫人の悦子さんとの夫婦対談。クリエイティブな分野では天才的な才能を発揮する可士和さん。しかし、交渉ごとや契約は大の苦手。そこで元外資系化粧品会社のPRだった悦子さんを迎え入れた。同じ会社に勤めるようになり、関係性はどう変わったのだろうか。

「納期を延ばして欲しい」には、「それは無理」


——クリエイティブであることは、プライベートも仕事も区別がないように思えます。可士和さんに気持ち良く仕事をしてもらうために、私生活でもすべて可士和さんがイニシアティブを握っているのでしょうか。

悦子さん
「サムライ」という会社はたしかに佐藤のクリエイションで成り立っているので、彼のコンディションにものすごく気を使います。それは仕事でないときもそうです。けれども「ご主人様を立てて」というような感じではないと思います(笑)。

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可士和さん
ビジネスとしてクリエイティブを尊重するのと、夫婦関係はまた別の次元というか、関係性は別のレイヤーですね。

悦子さん
クリエイションに関することは、佐藤にしかできません。けれど、プロジェクトマネジメントや契約については私の判断で行っているので、お互いの役割をそれぞれ尊重しています。

例えば彼から「納期を延ばすように交渉して欲しい」と言われることもあります。その場合、なんでも指示に従うのではなく、「それはなぜ?」と聞くようにしています

私は営業として広告代理店に勤めていましたし、その後クライアントとしてお金を払う立場も経験しています。だから、納得できる理由か判断します。とても納得できないような理由であれば、「そんな勝手は許されない。絶対に約束の期限までに仕上げないとダメ」と言っていますね。

——自宅ではどのような関係なのでしょうか。

悦子さん
私が買い物を含めて食事を作ったり、日常的な家事は担当しています。でも、子どもの習い事で遅くなったり、勉強を見るのがたいへんだったりして、夕食の片付けをしないで子どもと一緒に寝てしまうこともたまにあります。そういう時は夜中に、カタカタという物音が聞こえてきて、佐藤が食器を洗ってくれていたり、家の中をきれいに片付けてくれたりしています。

可士和さん
僕は片付いていないと落ち着かないんですよ。それに片付けることはストレス発散にもなるので、楽しく整理整頓をしています

——ものを散らかした家族には小言をおっしゃられることはないのですか?

可士和さん
子どももいるし、おもちゃなどが散らかってしまうの、しかたないと思うんですね。悦子が片付けたところで僕の求めるクオリティには仕上がらないので(笑)。

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悦子さん
『佐藤可士和の超整理術』という本を書いたくらいなので、とても細かいんですよ。先日もタオルを畳んで引き出しにしまったのですが、畳み方が合っていないと、直されました(笑)。

可士和さん
もう片付けは趣味ですから。整えずに寝る方がストレスになってしまって。片付けると気分がすっきりしますね。

——家でも役割分担がしっかりとなされているんですね。ケンカなどなさらないのでしょうか。

可士和さん
ないですね。まず子育てについては完全に一致しています。意見の相違などはほとんどありません。

それは多分、出会ったころにさかのぼると思うんです。僕が制作局にいて、彼女が営業局。初めて見かけたとき、ブレスレットをたくさん重ね付けしていたんですよ。でもそれは派手派手しくもなく、上手に自己主張をしていて。「センスがいいな」って思ったんですよ。

センスって、価値観だったり美意識だったりすごく多くの情報が含まれていると思うんです。だから結婚するには絶対に「センス」が合っていないと厳しいと思っていました。

悦子さん
そうですね。私が初めて佐藤を知ったのは電話越しで。社内で電話を取り次ぐときに、みんな挨拶として「お疲れさまです」って言いますよね。でも彼はいつもそれをスルーするので、あんまり印象が良くなくって。それで実際に初めて会ったときの佐藤は、金髪でスケーターのようなファッションでした。どちらかというと私の余り好みではない服装だったにもかかわらず、それがとてもおしゃれに見えたのですごくセンスがいい人だなって思いました。

可士和さん
だから結婚は比較的すぐに決めたんです。けれども、驚いたり議論になったりはしますが、ケンカはないですね。

悦子さん
結婚前の働き方は夜中まで働いて、それでも仕事が終わらないので、早朝に出社するような日々でした。でもそんな働き方をしていたら、一生に一度しかない新婚生活を楽しめないと思って結婚を機に退社することにしました。でも、それを佐藤(可士和さん)に伝えたらとても驚かれて。「ふたりで働く予定だから、あの家賃のマンションを借りたのに!」って(笑)。

可士和さん
家賃は払えなかった額だった訳ではないんですよ。まさか仕事を辞めるとは思ってもみなかったという驚きが大きかったですね。

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悦子さん
でも幸い、広告代理店を辞めると同時に新しい仕事に声を掛けていただきました。クラランスのPRマネージャーにリクルートされて。だから入籍して2〜3カ月だけおやすみしてすぐに働きに出ました。このことから私は「いちばん大切なものだけを選んであとは潔く手放せば、次の道が拓ける」ということを教えられました。

これはゲランを辞めて「サムライ」に専念するときにも通じました。今、佐藤と公私共にパートナーとして歩むことができているのも、そのおかげかなと思っています。

可士和さん
あと先ほどのケンカについてですが、意見の食い違いや齟齬はよくあります。けれども、2人のあいだでは、ささいなことでも何でも話し合うことにしています。

僕の場合は、祖父母合わせて7人家族で育ったんですね。7人もいるとそれぞれが自分の話したいことを話して賑やかです。けれども会話として成立しているかと言われればそうではなく、みんな勝手に話をしている(笑)。

そんな経験から、たとえ家族でも「話さないと自分の思っていることは相手に伝わらない」ということを結婚当初から悦子に伝えていましたね。

悦子さん
結婚当初はささいなことを言わずに溜め込んでいました。「なんで分からないかな」って思っていたのですけど、夫婦といえども他人なのですよね。無条件に伝わるなんてありえないんですよ。そこで自分たちの仕事にも通じるものがあるなと気付かされました。

私たちが主に手掛けていた広告は、コミュニケーションの仕事ですよね。企業や商品のメッセージを伝えようと思ってもこれだけ多くの情報があふれている中ではなかなか「伝わらない」ですし、よほど印象に残るものでなければ「スルーされて」しまいます。個人と個人のコミュニケーションであっても「伝える」ことの難しさは基本的には同じかなと思います。

可士和さん
広告の仕事から、いかにコミュニケーションが難しいか学びました。100%を相手に理解されることはないんです。日本人は、ハイコンテクストカルチャーで、あうんの呼吸とか空気を読むことが美徳とされますよね。「アレ」が欲しいというだけで、「お茶が出てくる」とか。

ですがコミュニケーションって、すこしでもすれ違ったら、それをきっかけにものすごく大きな溝が広がってしまうんですよ。

——可士和さんに取って、奥様は公私共に良いパートナーでいらっしゃるのがよく伝わってきました。互いに得意分野を持ち、対等に話し合うから、職場でも家庭でもケンカにならないんですね。結婚してもっとも良かったことはなんですか? そしてどんな存在なのでしょう。

可士和さん
彼女と僕はいわば向かい合っている存在です。僕ひとりでは、自分が向いている180度の世界しか見られません。でも悦子が僕の背後を、僕の見えていない残りの180度を見てくれています。お陰で僕は360度の視野を得られているのです。彼女と話していると、自分が見逃していることがいっぱいあると気付かされます。それから、彼女を例えるなら「強い人」です。

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悦子さん
ええ!? あまり嬉しくないかも(笑)。なんだかまるで恐妻家みたいじゃないですか(笑)。

可士和さん
僕のなかで「強い」って最上位の概念なのですよ。僕も「強く」ありたいと思っているので。結婚しようと思ったときは、彼女がここまで強いとは思いませんでした。けれど今は視野を補ってくれる意味でも頼もしい存在です。

佐藤可士和 Kashiwa Sato
クリエイティブディレクター
慶応義塾大学特別招聘教授
博報堂を経て「SAMURAI」設立。主な仕事に国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブンジャパン、今治タオルのブランドクリエイティブディレクション、「カップヌードルミュージアム」「ふじようちえん」のトータルプロデュースなど。近年は文化庁・文化交流使として日本の優れた商品、文化、技術、コンテンツなどを海外に広く発信していくことにも注力している。毎日デザイン賞、東京ADCグランプリほか多数受賞。著書「佐藤可士和の超整理術」(日本経済新聞出版社)ほか。
http://kashiwasato.com/

佐藤悦子 Etsuko Sato
「SAMURAI」クリエイティブマネージャー
1969年東京生。早稲田大学教育学部卒業後、広告代理店、外資系化粧品ブランド勤務を経て2001年クリエイティブディレクター佐藤可士和のマネージャーとしてSAMURAIに参加。
大学や幼稚園のリニューアル、病院のトータルディレクション、数々の企業のCIやブランディング、商品及び店舗開発など数々のプロジェクトのクリエイティブマネージメント&プロデュースに幅広く携わる。著書に「SAMURAI 佐藤可士和のつくり方 改訂新版」(誠文堂新光社)、「子どもに体験させたい20のこと」(筑摩書房)など。

「あの人」の夫婦関係
vol.2

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