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日本とシリコンバレーをつなぐ日本人、櫛田健児の想い

櫛田氏が見据える日本の未来は

取材・撮影=#LYVE(ハッシュライブ)

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Mar 31, 2017 by Mitsuhashi Yukari Reporter

3 Lines Summary

  • ・スタンフォード大学アジア太平洋研究所の研究員・櫛田健児氏インタビュー
  • ・日本はもっと本来の「産学連携」を強化していくべき
  • ・今後、日本の「データ」は価値を増していくはず

さまざまなスタートアップが誕生するシリコンバレー。いま、世界中から注目を集めるイノベーションの聖地と日本との架け橋になるべく、日々奮闘している日本人がいる。スタンフォード大学アジア太平洋研究所の研究員、櫛田健児さんだ。今回は、彼の想いに迫った。

シリコンバレーと日本を繋ぐ

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私が現在、スタンフォードで取り組んでいるのが「スタンフォード・シリコンバレー・ニュージャパン・プロジェクト」です。これは、ニュートラルな大学の中で、「日本がシリコンバレーを上手く活用するための、持続可能な枠組みを設けるため」のプロジェクト。

月に数回、日本人コミュニティと日本に関心がありそうな人たちを集めた公開フォーラムやネットワーキングの場を提供しているのです。

また、シリコンバレーを理解して活用するために、その歴史や現状、未来を予測分析する研究活動を行っています。日本から来てシリコンバレーで勝負しているスタートアップは、5年前に比べると数と質ともに上がっており、彼らを時間軸で追いかけるケーススタディも集めています。

政府の政策評価も活動の一環です。イノベーション促進や対日投資促進、スタートアップコミュニティ活性化といった政府の政策を、KPIなどを軸に大学が客観的に評価。その他、日本企業とシリコンバレースタートアップの上手なコラボレーション、ビジネスマッチング、スタンフォード大学の学生が参加するアイディアソンといったアウトリーチの活動を実施しています。

産学連携、オープンイノベーションの定義

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日本では、産学連携が非常に狭義に捉えられている印象を受けます。それは、企業から特許収入やライセンス収入を得て大学の研究を安定させるという話でもなければ、大学が企業の安い研究開発の下請けになることでもありません。スタンフォード大学には1970年代から今まで1万件ほどの知財や特許権がありますが、その打率は1万分の3です。1万件のうち、たった3つが40年間のパフォーマンスの60%を叩き出しています。世界で一番それが上手いスタンフォードですら、その打率なのです。

産学連携や共同研究が目指すのは、大学が理論にブレイクスルーを見つけることで産業が抱える問題を一挙に解決することです。優秀な人材を企業が大学に送り込み、莫大な資金を投入し、大学院生や教授とともに問題解決に取り組む。問題が解けると舞台は大学から産業界に移り、大学側の優れた人材が産業に流れる。産学連携は、人材の循環とアイデアの循環が一緒になって実現するのです。

最近では、カーネギーメロンのロボティクス&AIの研究センターの人材40名が、Uberによって一度に引き抜かれました。これは大学から企業へ人材が流れた例ですが、今後、Uberでの成果を学術論文にまとめることで大学に舞い戻る人材もいるでしょう。

もう一点、アメリカの起業家の平均年齢は39〜41歳ですが、日本では産学連携というと学生起業家が主役になっています。でも、大学を出た直後に起業するとなると、分野が狭まります。大半の分野で、長いキャリアを積み、人脈や技術を身につけてからのほうがいい起業家が生まれるだろうと思います。

大学の外に出る、産学連携の前例をつくる

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日本の研究者は、産業とのインタラクションの経験が多くありません。大学の教授が大企業の研究所に入って、研究成果を出してから再び大学に戻るという循環はあまりない。けれど、日本の優秀な研究者は、その技術力や技術のポテンシャルを積極的に日本企業ないしはシリコンバレーの企業にアピールするべきです。前例がつくられることで、産学連携の経験が増えて人材の循環が生まれるはずだからです。

日本で、大学から良い技術をスピンアウトして事業化された先駆者といえば、筑波大学教授でサイバーダインを立ち上げられた山海嘉之先生がいらっしゃいます。最近では、東大の自立走行ロボット「SCHAFT(シャフト)」がGoogleに買収されました。シャフトは、米軍のDARPAのコンテストでも予選をダントツで突破しました。日本の大学からスピンアウトした素晴らしい技術を、シリコンバレーの大企業がそのまま買収するという前例ができました。

経産省が実質的に持っている巨大な研究開発機構「NEDO」。こちらでは、テクノロジーの開発や商業化を実施するプログラムを行っていますが、資金を使ってさまざまな人材を長期で送り込むべきだと思います。例えば、優秀な人材を奨学金のような形で4年間博士課程で送り込むとか。世界で活躍する日本人を増やす。海外に出たからといって彼らは日本人であることを捨てるわけではなく、むしろ、外に出ることで自分が日本人であることを再認識する人が多いです。

そうやって世界に羽ばたいた日本人が、世界とのハブになっていくはず。大成功してから若手の日本人とか起業家の人たちのメンタリングを喜んで引き受ける。それは国益。優秀な人ほど外に出すべきでしょう。

外部でフォロワーをつくり、取り込む努力

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資産と大きな市場を持つ日本企業は、シリコンバレーのスタートアップにとって魅力的なはずです。それは、事業の買い手として、また顧客として取引することで急成長を後押しできるからです。ただ日本企業には、外部から異なるDNAを内部に取り入れる仕組みや免疫がありません。アメリカに追いつこうとしている時代は良かったですが、自らがフロンティアに立った今、フォロワーをつくるノウハウが必要です。実際、いくつか例が出てきています。

例えば、トヨタは、人工知能の研究・開発拠点として「TOYOTA Research Institute」を設立しました。投入資金は、シリコンバレーの規模感から見ると10年間で100億円と規模は小さいですが、良い取り組みです。また、コマツは明確なニーズに対して、その手段をシリコンバレーに見つけました。工事現場を3Dマッピングするために、サンフランシスコの「Skycatch」というドローンスタートアップに出資したのです。実証実験で技術を検証し、急速に手を組んで実用化まで持ち込んでいます。

ホンダのオープンイノベーションも良い例です。ホンダの市場シェアは世界の他のメーカーに比べると小さいため、技術や人材を囲い込もうとしては人が集まりません。シリコンバレーにあるラボでは、物理的な場所、車のエンジニア、プロトタイプといったホンダのリソースを活用できます。こうして共同開発をした成果を、スタートアップは他の企業に売ることも可能です。いっぽうのホンダには、共同開発によって開発期間を3年から1年に短縮するなどのメリットがあります。

シリコンバレーという地と、日本にあるチャンス

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必ずしも、すべてのスタートアップがシリコンバレーに来るべきだとは思いません。日本のマザーズ市場は、NASDAQの10分の1くらいのサイズで上場できてしまいますが、シリコンバレーで成功するには、大規模なスケールと急成長が必須。ただし日本国内でも、すごくスケールしそうなものはシリコンバレーに来て勝負するべきです。規模感によって、国内で勝負するのか、シリコンバレーに進出するのかを棲み分けるのはありだと思います。

今後、日本の「データ」は価値を増していくでしょう。政府から情報収集の明確なガイドラインが出れば、企業はより安心してデータを収集できます。日本は、超高齢化社会や過疎化で世界をリードしていますが、人々の生活周辺で取得できるデータが大量に存在します。先進国と途上国ともに参考になるはずで、これはビジネスチャンスを意味します。データをもとに、少子高齢化や過疎化の対策にAIなどのテクノロジーを活用すれば、それは日本のためにもなるのです。

日本 VS. シリコンバレーという図式は過去のものです。世界の良いところ取りをしたシリコンバーには、世界を変えようと意気込む優秀な人材が集まっています。それを実現しやすい仕組みが出来上がっていることで、各種既存業界を根底から覆すような変革が生まれる。イスラエル、ニューヨーク、シンガポールなど世界各地で出た変革の芽は、最終的にはGoogleやAppleといった時価総額が高いビッグプレーヤーが存在するシリコンバレーに集まります。シリコンバレーは、今後も変化の震源地として存在し続けるでしょう。

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