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「人間は嘘をつく生き物」…澤口俊之氏が明かす嘘を言うメカニズム

4月1日はエイプリルフール。そこで脳科学者の澤口俊之氏に人間が嘘をつく理由を聞いた。

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Apr 01, 2017 by editors room Reporter

3 Lines Summary

  • ・人間は日常的に騙すという行為を行う
  • ・嘘をつくのは「自己利益」と「協調性を高める」ことが目的
  • ・病的な嘘つきは脳の構造から異なる

人間はもともと嘘をつく生き物

−−本当でないことを相手に信じるように伝える言葉、人を欺く言葉、偽り、虚偽…。辞書で調べると、こんな意味が出てくる「嘘」。人間はなぜ嘘を言うのでしょうか?

前提として人間はもともと嘘をつく生き物なのです。本質的に人間を含む生き物は、日常的に嘘をつき、騙すという行為を行っています。生物の進化的な話でいうと、他者を騙すというのは「自己利益」を得るためとされています。

さらに、最近ではもうひとつの理由があると言われていて、それが「協調性を高める」ためだと考えています。昔は、自己利益のために人を騙すという点だけでしたが、比較的最近になって、検証者が「協調性を高める」ための嘘もあることに注目するようになってきたんですよね。

実は「協調性を高める嘘」は、皆が日常的にやっているんですよ。例えば、家内から「髪の毛が薄くなってきた?」と言われたとしますよね。そのとき実際に薄いと思っていたとしても、大抵は「そんなことはない」「昔と変わらないよ」と返事をします。あるいは「老けたかしら?」と聞かれた場合でも、「そんなことはない」と否定しますよね。この嘘は、「その場逃れ」というわけではなく、「協調性を高める」ことにつながっているんです。 ちなみに、人間は週に2回は嘘をつくことがわかっていて、健常な方が嘘をつくのにはこのような理由があると思われます。

−−そんな形でつい言ってしまう嘘。嘘をつくと脳内ではどのようなことが起こるのでしょうか?

これはすごく難しい問題ですね。ただ、「本当のことを言っている脳」と「嘘を言っているときの脳」の活動の仕方は違います。具体的には、「本当のことを言っているときの脳の活動領域」に加えて、「嘘を言っているときの脳」は、さらに高度な活動領域を使っているのです。我々脳科学者は、嘘を高度な言語と考えているんですよ。実際に、嘘を多くつく子どもの方が知能が高いというデータもあるほどです。

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−−「嘘をつくことで快感が得られる」といったことはないのでしょうか?

これについては、「ない」と思っています。何気なく週2回は普通に嘘をつくということを考えると、快感ではないでしょう。さらには、嘘をついて後悔することだってある。そうすると、やはり嘘をつく理由は、「自己利益」と「協調性」に行き着くんですよね。

ただ、嘘というか悪口を共有すると、ストレスが下がり快くなるということはあります。それがSNS上で炎上する理由のひとつです。嘘を敢えてついて、他人と共有するのはそういう要素があるのかもしれません。前提として、他人が嘘と分かっていながらも「そうなんですか?」と取り上げて炎上しますよね。それは互いに共有すると快感になるんですよ。 

だからSNSで炎上し、お互いにやりあってしまう。嘘や悪口をひとりですると、逆に傷ついちゃうんですよ。でも、人と共有すると快感になって広まってしまう。言われる側はたまったものじゃないけど、嘘は特定人物にはやらない方がいいんだけど、そういう研究もあるんですよ。

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「嘘をつく人」の特徴は、民族性や性差の違いに現れる

−−民族性の違いはあったりするのですか?

学者は人類普遍性をかかげていますが、実は最近、民族性が話題になっているんです。その流れのなかで推測を交えますが、例えば稲作文化の中国人(東洋)の方々は協調性が高くて、集団生活をしています。つまりは、稲作は用水路整備などでいろいろと労力が大きく、協調性がないとできません。日本人もこっち側に分類されます。

そして協調性が高い者同士が集まると、嘘をつくことを避けようとする傾向があるのです。「秘密を共有する」という研究があって、アメリカ人は嘘を共有することで結束が高まるのですが、日本人を含めた東洋人の場合は、もともと団結心が強いのであえて嘘(秘密)を共有する必要がないんですね。そういう意味において日本人はあんまり嘘をつかないんです。

逆に言うと、そうでない個人主義の小麦文化(稲作より栽培に労力が少なく、他者の協力なしでできる)はむしろ、自己利益のために嘘をつく傾向があるようです。

−−民族性の違いはあるんですね。では、性差はどうでしょうか?

これもありますね。ちなみに男性的である方が嘘をつきません。テストステロンという物質があって、これは男性ホルモンの最も重要なものなんですね。男性的な人ほど、このホルモンが多いんです。そして、こういう方は正直で、嘘をつきません。というよりは、嘘をつく必要がないんです。

男性的というのは公平な視点を持っていて、リーダーになりやすい傾向があります。事実、リーダーの方はテストステロンが高いということがわかっていて、さらに公平を重んじるので、「自分の利益」を顧みずにすべて正直に言うんですよ。また、嘘をついていれば他人から信用されませんよね。

病的な嘘つきとなると脳の構造から異なる

−−これまでは健常な人の嘘について伺いました。病的な嘘つきの方というのは、脳の構造からして違うのでしょうか?

そうなんです。1番違うのが前頭前野(前頭葉)の構造。ここが快感に非常に関する部分なんですよね。反社会性人格障害(心理学用語でいうサイコパス)には二つの傾向があります。平気で嘘をつくか、犯罪を犯すということです。

研究でわかったのは、反社会性人格障害の方の前頭前野は、通常の方より30%も小さいことがわかっています。そこが活性化するんですけど小さいので、快感を得るために平気でうそをついてしまうと考えられます。

もともとは「自己利益」のためだけと思われていた、嘘をつくという行為。それが最近になって、「協調性を高める」という理由があることも分かってきたという。何千年前の人間も嘘をついていたはずだが、その解明が現在も続いていることに人間の面白さを感じた。

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◼︎澤口俊之氏 
1982年 北海道大学理学部生物学科卒業/1988年 米国エール大学医学部神経生物学科 ポストドクとして赴任/1991年 京都大学霊長類助手研究所助手/1999年 北海道大学医学研究科教授/2006年人間性脳科学研究所所長就任/2011年武蔵野学院大学教授兼任/2012年同大学院教授兼任 専門は神経科学、認知神経科学、霊長類学。理学博士。近年は乳幼児から高齢者の幅広い年齢層の脳の育成を目指す新学問分野「脳育成学」を創設・発展させている。著書に「学力と社会力を伸ばす脳教育」「夢をかなえる脳」「やる気脳を育てる」「脳を鍛えれば仕事はうまくいく」(宝島社)「モテたい脳、モテない脳」(PHP文庫)など多数。最近の著書に「発達障害の改善と予防」(小学館)がある。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、NHK「所さん!大変ですよ」等、TV番組にも出演。 

文=重野真

【特集「エイプリルフールに「ウソ」を真剣に考える」】

第1回  人が嘘を信じるワケ。そして騙されないように気をつけることは?

第2回  「人間は嘘をつく生き物」…澤口俊之氏が明かす嘘を言うメカニズム(この記事)

第3回  『ウソを報じ続ける』虚構新聞のコダワリ

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ホウドウキョク編集部
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