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国民の半分が独身に。“超ソロ社会”で孤立に陥らないためには?

特集「『人生100年時代』のサバイバル術」第4回

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Apr 06, 2017 by editors room Reporter

3 Lines Summary

  • ・約20年後の日本は、世界でも類を見ない“半分が独身”という社会になる
  • ・独身者を心理的孤立に追いやらないためには、“拡張家族”という概念が必要
  • ・ソロ社会で生きる力とは、様々な形で人と繋がり、自己の多様性を生み出すこと

「2035年に、独身者と有配偶者の比率がほぼ5割になります。つまり人口の半分が独身者になる。それはもちろん未婚者だけでなくて、離婚や死別したケースも含みますが」

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衝撃的な事実を教えてくれたのが、『超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)などの著書を持つ、博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダーの荒川和久さん。にわかには信じがたいかもしれないが、少子高齢化とライフスタイルの多様化が加速度的に進む我が国では、世界でも類を見ない“超ソロ社会”という事態を目前に控えているのだ。

根強い結婚規範が、未婚者の自己否定を呼ぶ

「高度成長期は皆婚社会でした。人はみんな結婚して子どもを産み育て、家族という安心できる共同体を作ってきました。離婚率も低く、夫婦は一生添い遂げるものと信じて疑わなかった。ところが今や3組に1組が離婚するようになり、結婚後15年以上の熟年離婚も増えています。結婚したからといって安心できるわけじゃなく、誰もが、いつなんどきでもソロになるリスクを抱えているわけです」

独身というと未婚ととらえがちであるが、離別者や死別者もまた独身。2015年の国勢調査によれば、標準世帯と呼ばれた「夫婦と子」からなる世帯は、2010年時点ですでに「単身世帯」に抜かれている。つまり、日本でもっとも多い世帯類型は、「ひとりぐらし」になっているのだ。加えて、結婚しても子どものいない共働きの家庭も増えている。生活の形が大きく変化しているといえるだろう。

「日本人は欧米諸国に比べて根強い結婚規範を持っています。独身者であってもそうした規範に支配されて振り回されているんです。特に、未婚者は『結婚できない自分はダメなんだ』『何かが欠落しているんだ』と潜在的に感じてしまうわけです。そのためか、既婚者と比較して未婚者の自己肯定感は低いケースが多いんです」

家族とソロとを分断しない、互いにつながる拡張家族とは?

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「ソロ社会化というとすなわち家族の崩壊だと恐怖し、未婚や非婚を悪と決め付ける風潮があります。そうした家族とソロを分断して何も生まれません。結婚しようがしまいが、子どもを産もうが産むまいが、それで人間としての社会的価値が決まるものではないんですよ。

たとえ生涯独身であっても、子どもを育てることに間接的に貢献することはできます。子ども向けのサッカー教室をつくったり、習字教室をつくったり、リアルな体験として子どもの育成に貢献するのもそうですが、いちばん大事なのは、頑張って働いて税金を納めることであり、できるだけ消費をして経済を活性化させることだと思います。それが巡り巡って、社会的に子どもたちを育てることにつながるのです」

それは、ひとりひとりが自分の社会的役割をどう果たしていくかの問題でもある。「結婚して自分の子どもを産み育てることだけが偉い」という論調で家族とソロが対立してしまう構造は不健全であると荒川さんはいう。

「大事なのは、家族という概念を『夫婦と子』という小さい単位で考えないことです。ソロや家族という互いの状態で分断するのではなく、考え方としてつなげる。考え方が同じ人が集まれば、それもある種ひとつの“家族”なんですよ。共働きで互いに育児負担を押し付け合う夫婦がいますが、家族だけしか頼れないという状態から脱却すべきです。

たとえば、育児をアウトソーシングするという選択肢があってもいい。その依頼先は、夫と死別した高齢独身女性にすることで、家族とソロは互いにつながり、助け合えるわけじゃないですか。そうした家族の概念を拡大した“拡張家族”という考え方が必要になると思います」

もちろん子育てや家事のアウトソーシングにとどまらず、趣味のつながりや社会人サークル、友だちであっても構わないという。SNSが普及した現在、それらを増やす方法は以前より格段に容易なはずだ。

人と会うことは“自分”を生み出すこと。複数の依存先が自立へ

独身に限らず、全員がソロで生きる力を持つことが必要です。それは、逆説的ですが、人とつながる力です。できれば、実際に会う方がより良いですね。誰かと会って話をすることで、自分自身のなかに“その人と相対する自分”が生まれるわけです。相手が好きという感情は、相手そのものではなく、相手と自分との間に生まれたその新しい自分が好きということなんですよ。人とつながることは、自分の中の多様性を生み出すことであり、それが精神的自立につながります。

自立というのは、誰にも頼らないということではなく、逆に複数の依存先を持つことなんです。逆に、依存先がひとつしかない状態の方が危険です。奥さんと離別死別すると生きていけないという高齢男性が多いのですが、それは依存先が奥さんしかいないからです。その奥さんがいなくなることイコール“自分自身”を失うということになります。だから空っぽになっちゃうんですよ」

拡張家族とは、様々な人と相対して、自分の中に「頼れる自分自身」をたくさん生みだす行為であり、それこそが心理的孤立に陥らない方策といえそうだ。

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「ゆるやかな関係でもいいんです。でも、女性と比べて、男性はそれがなかなかできない。定年退職した途端、年賀状が1通も来なくなってしまうとか、男性はとかく職場でのつながりだけに依存しがちです。趣味を見つけるというのもいいんですが、趣味とは内発的なものであって、無理やり見つけるものではありませんよね。だったら、定年後も『働く』という形でつながりを保持していくという考え方もあるんです」

働くことを通じて自己の多様性を生み出すこと

仕事一筋で生きてきた高齢者が多い日本の社会において、仕事を否定することの方に無理があるという。働くことは、自身の社会的役割を確認できる術であり、生き甲斐となり得る場合もある。寿命が延びる時代に高齢者の余生をを考えたとき、定年後の65歳から健康でいる長い期間、仕事をしない状態でいることの方が不自然だという考え方もあるはずだ。

「これからはひとつの会社で勤めあげるという一社依存型の働き方ではなく、複数の仕事を経験し、依存できるスキルをたくさん身につけることが必要になってきます。『働く』という行動を通して、人とつながり、自己の中の多様性を生み出すことが大切になっていくのです。高齢者の採用面接で何ができるかを訪ねられたとき、『部長ならできます』と答える人もいるようですが、マネジメント的役割は今後人口知能(AI)にとってかわられます。プレイヤーとして何ができるか、自分は何ができるのか、そうした視点で自分の中の多様性を生み出して行く努力が求められていくと思います」

社会学者ジグムント・バウマンは、地域や会社や家族といった安定して固体的な共同体から、今後は個人が流動的に動き回る液状社会になるという。そうした個人化する社会においては、人とつながることで個々人が作り出すゆるやかなコミュニティが大事になると述べている。「妻がいるから」「会社があるから」という唯一依存では、いつ心理的孤立に追い込まれるかわからない。社会との接点を保持し、新たな人間関係を常に構築し続け、新しい自分を活性化していくこと。それが来たるべき未来の自分を助けることにつながるのかもしれない。

文=吉々是良

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荒川和久さんプロフィール
博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダー。早稲田大学法学部卒業。博報堂入社後、自動車・飲料・ビール・食品・化粧品・映画・流通・通販・住宅等幅広い業種の企業業務を担当。キャラクター開発やアンテナショップ、レストラン運営も手掛ける。独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・WEBメディア多数出演。著書に『超ソロ社会-独身大国日本の衝撃』(PHP新書)『結婚しない男たち-増え続ける未婚男性ソロ男のリアル」』ディスカヴァー携書)など
『超ソロ社会-独身大国日本の衝撃』
博報堂ソロ男プロジェクト

【特集「「人生100年時代」のサバイバル術」】

第1回  僕らは「80歳まで働く」世代に!? 人生100年時代『LIFE SHIFT』を読み解く

第2回  「人生100年時代」リタイア後35年間“お金で困らない”戦術

第3回  培養肉を食べ、遺伝子解析でガンの薬を…『人生100年時代』のテクノロジー

第4回  国民の半分が独身に。“超ソロ社会”で孤立に陥らないためには?(この記事)

第5回  人生100年、みんないつかは「ひとり」に。第一人者に教わる“ぼっち”の楽しみ方

第6回  「人生100年時代」の恋愛相談。「2度目の結婚」のために、いま知っておきたいこと

第7回  「高齢者が働く未来は明るい」落合陽一に聞く人生100年時代、理想の人材

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